ねっとの自称理系さん

http://d.hatena.ne.jp/D_Amon/20110103/p1
http://uchya.blog109.fc2.com/blog-entry-1420.html
http://uchya.blog109.fc2.com/blog-entry-1426.html
こちら↑でご活躍の id:tdam 氏。はてなダイアリーのプロフィールによれば「研究者を目指している理系研究者」なんですと。
http://d.hatena.ne.jp/tdam/
ところが……。

>ただし、それによって捕虜となった兵士たちを法的な手続きを取らずに処刑したことについては正当性は認められない、と結論づけていました。
問題はここですね。"正当性は認められない"=明確に戦争犯罪といえるかどうかだと思います。数学ではない限り、ある命題の裏が常に成立するとは限りませんので。(疑わしきは被告人の利益に)
(http://uchya.blog109.fc2.com/blog-entry-1420.html#comment2264)

どこから突っ込むべきか迷うが、まず「数学」(というか論理学)においても「ある命題の裏が常に成立」することなんてないのであって、「常に成立」するのは対偶(「常に成立」というのを「元の命題と真理値が一致」と理解するとして)。次に「正当性は認められない」の裏が「明確に戦争犯罪といえる」だと考えているらしいが、前者を「(行為xが条件Cを満たしていないなら、その行為に)正当性は認められない」と定式化したばあいその裏は「(行為xが条件Cを満たしているなら、その行為に)正当性は認めらる」になる。文脈に即して具体化するなら「捕虜の殺害が法的な手続きを経て行なわれていないなら、殺害に正当性は認められない」が元の命題、その裏が「捕虜の殺害が法的な手続きを経ていたなら、殺害に正当性は認められる」となる。「数学」であろうとなんだろうと一般に「裏が常に成立するとは限らない」のはその通りであり、わざわざそう主張するからには「このケースでは成立しない」と言いたいのだろうから、彼は「捕虜の殺害が法的な手続きを経ていたからといって、殺害に正当性が認められるとは限らない」と主張していることになる。そして、この主張には私も諸手を上げて賛成だ! 法手続きに瑕疵があったり、そこでの事実認定に誤りがあったり、量刑(死刑)が不当だったりのケースですな。
もういっちょ。

また、「南京事件において便衣兵であるから裁判なしで処刑してよい、とは言えない」と「南京事件において便衣兵であるから裁判なしで処刑することは違法、虐殺にあたる」は等価ではないと思います。それとも、背理法が成り立つと思っていますか?

法律の条文で規定されたことは明確に合法・違法といえるが、そうでないことは解釈論に陥ってしまうので、有罪とも無罪とも断定できない、(=背理法は成り立たない)といっているだけです。

>ところで、なんだかしきりに背理法という言葉を使っていますが、背理法なんて関係ありません。あなたは「殺害してはいけない理由が明示されていなければ、殺したことは罪には問えない」ということを立脚点にしているのに対して、私は「殺さなければならない理由を明示できなければ、人を殺害してはいけない」ということを立脚点にしているだけです。


立脚点が違うというのは同意します。


しかし、私は以前から日本軍のある行動が戦争犯罪であると認定するためには、その行為が違法であるという証明をしなければならないと主張しています。法律に書いていないから「合法とは言えない=違法」とは必ずしもならないのが当然です。私が背理法といったのは、「合法とは言えない=違法」とする貴方の主張についてです。

いずれもここのコメント欄から。強調は引用者。他にも何カ所かあるがわかりやすいところを。
うちゃさんはやさしく「背理法なんて関係ありません」と指摘されてますが、要するに「背理法」という用語を間違えて覚えてるんですよ。ネットの自称理系さんが人文科学や社会科学の領域に属する話題で醜態をさらすのはおなじみの光景だけど、これ高校(それとも中学?)の数学レベルのはなしだからなぁ。


追記:さて、彼が「対偶」と「裏」とをテレコで覚えてしまっている、という好意的な解釈を採用してみよう。なるほど、命題論理や(一階の)述語論理における推論規則と、自然言語をベースに行なわれる推論のルールがすべて一致しているわけではない、というのはその通りである。では「数学」以外の領域では対偶をとることが真理保存的でないという大胆な主張について検討してみよう。元の命題Pの対偶をCとすると、PとCの真理値は必ずしも一致しない、ということになる。さらにこのCの対偶をとってやると元の命題Pになるはずなのだが、「マイナスとマイナスをかければプラスになる」かのように真理保存的でないプロセスを2回重ねれば真理保存的になるというわけじゃないから、PとPとの真理値は必ずしも一致しないことになる!