『海軍反省会2』雑感

PHPからは今年の2月にすでに『[証言録]海軍反省会3』(戸高一成編)が出ているのだが、今回ようやく2を読んだ。
以前に1を読んだ時の感想にも似たようなことを書いたが、旧海軍についての私程度の知識では「読んで勉強になる」というところまでいかない。残りの部分の刊行が進んで専門家が資料として利用した成果を待つ方が生産的かも。もちろん、旧海軍に詳しい人にはいろいろと読みどころがあるのであろう。というわけで、以下は単なる雑感。
・「ラボール」という語が出てくるので最初はフランス語の「ラポール rapport」と空目したのだがラバウル Rabaul のことだった。調べてみると発音は räˈboul だったのでなるほど「ラボール」の方が近い。さすが海軍士官。
・第17回の最後に、保科善四郎率いる国防協会のメンバーが訪台して台湾軍に歓待されたという報告があるのだが、手みやげとして保科が艦長をしていた陸奥の模型を渡したとのこと。するとメンバーから「あいつは大した戦もしないで沈んじゃったんだから」という疑義が出て、「そいつは内緒で保科さんが艦長だったということでいきましょう、という事で行きました」、と。千人以上が亡くなった事故なので非常に不謹慎ではあるのだが、「相手が陸奥の最期を知ってたらどう思うだろう」と思ってしまった。
・参加者の多くが、連合艦隊司令長官としての山本五十六にはかなり厳しい評価。
・陸軍と海軍を比較すると海軍の方がずっと小さい所帯であったという事はよく言われるが、海軍が陸軍に引きずられた背景にそれがある、との意見(第19回)。海軍側が1人、2人で起案しているのに対して陸軍側には「中尉ぐらいがたくさん」いて、「粗製濫造」で次から次へとプランをもってくる。海軍は夕方7時になると女性タイピストが帰宅するのに、陸軍は「少尉とか軍曹なんかのガリ版の上手なやつをわんさ持って」いる、と。「普通はサーベルでガチャガチャして脅かして陸軍が勝ったようにいってるけれども、そうじゃなくて」、と。なるほど、官僚機構としての側面に着目するなら大きなファクターかも。
・やはり「反省」の方向を間違えてるよなぁ、と思いたくなる人もいて、第15回、16回はテーマが「実戦に生かせなかった砲術」。砲術の専門家が旧海軍は戦艦をうまく活用できなかった、こうすればよかったという話をしているのだが、しかしじゃあ彼の構想通りに戦艦を使って決戦をすればどうなったかというと「それを何年かやっていれば、敵が原爆を、潜水艦で持ってきて、太平洋の深いところから、東京、横須賀、大阪、なんていう所をやるかもしれん。その時は、おそらく手がなくて降参、少なくとも、不完全な停戦になると思います」(214ページ)というのだから、戦艦乗りにとってはやりがいのある話かもしれないけれども日本にとってはろくでもない結末。この発表に対してはさすがに異論が続出して、大井篤などは「ちょっと、何かね、クレマンソーじゃないが、戦争は軍人に任せておけない、というような格言を立証するようなものでね、これはちょっと危ないですよ。こんな事あんまり言っておったら」とばっさり。