歴史修正主義者の史料読解法――「片言隻句に飛びつく」の巻

参考エントリ(コメント欄もあわせて)
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20120117/1326825260
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20120120/p1
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20120124/p2
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20120124/p1
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20120124/p1


本日、元「慰安婦」の写真展をニコンが一方的にキャンセルした件が CNN で報じられたことについてブクマをつけたり、米ロサンゼルス郡が1942年の日系人収容要請決議を取り消したというニュースにコメントしたりしたところ、歴史修正主義者からメンションがありました。

みなさんご存知の(そう、彼はおそらく「俺たちだけ」がこの尋問調書について知っているのだと思っているのでしょうが、「慰安婦」問題についてまともな研究者の書いた文献をいくつか読んだことのある人間にとっては、これは馴染みのある史料です)「日本人捕虜尋問報告書第49号」を引き合いに出してきたわけです。
しかしながら、彼が依拠しているのはただただ "professional camp follower" という3語だけです。では、このフレーズがどう用いられているかというと……。

A "comfort girl" is nothing more than a prostitute or "professional camp follower" attached to the Japanese Army for the benefit of the soldiers. The word "comfort girl" is peculiar to the Japanese.

そう、「慰安婦」という婉曲語法を説明するために「その実態は売春婦であった」としているに過ぎません。"professional camp follower" という語が用いられているのは、米軍にとって売春業者とはそのようなものとして認識されていたからでしょう。
このネトウヨくんは、歴史修正主義者の史料読解法の重要な特徴を2つ体現してくれています。一つは、その史料内での文脈(この場合なら、「慰安婦」という婉曲語法を説明するため、というもの)を無視して片言隻句に飛びつく、というものです。もう一つは、その史料の歴史的な位置づけを無視して片言隻句に飛びつく、というものです。この尋問調書はビルマの米軍に随伴していた心理作戦チームが売春業者と「慰安婦」に尋問した結果をまとめたものです。「慰安所」が1937年に改正された野戦酒保規程にもとづいて設置されているといった事柄が、そうした尋問から明らかになることはまず考えられませんし、現にそうした事情は一切出てこないわけです。したがって、この調書をもってただちに「慰安所」制度についての米軍の認識とするわけにはいきませんし、まして「慰安所」制度の全貌がこれによって明らかになるということなどあり得ないわけです。


追記:そうそう、この尋問調書それ自体のうちに、「慰安婦」問題否認論者にとって都合の悪い記述が多々あることを彼が無視している……という点については、冒頭にあげた関連エントリでも見られる現象に過ぎないので、ここでは改めて触れてはいません。