右派論壇人における“勝利の方程式”

日頃の行いが悪い(?)せいで Youtube にアクセスするとチャンネル桜の動画などが頻繁にお勧めされてしまうのですが、今日は「【水間政憲南京大虐殺陥落!本多勝一、写真捏造を認める![桜H26/9/18]」というタイトルが目についたので再生してみました。
https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=9y4JOIYhbfk
週刊新潮』9月25日号のグラビア記事をかざして「大勝利!」と喝采を叫んでおりますが、当サイトの読者の方ならお気づきになった方も多いと思います。ここで「誤用」が指摘されている写真はかつて笠原十九司氏が岩波新書の『南京事件』で扉写真として使用し、その後誤用を認めて別の写真に差し替えたという経緯のあるものです。『中国の日本軍』が刊行されたのが1972年。笠原氏の誤用が明らかになったのが1998年。南京事件「論争」は1980年代から本格的な第2ステージに入っており、98年にはもはや72年刊行の本が話題になることも少なく、これまで指摘されてこなかったということなのでしょう。
それにしても、1972年といえば南京事件についての学問的な研究成果は極めて限られていました。そうした時期における写真の誤用をとりあげて「南京大虐殺陥落!」とはやし立てているわけですから、「一点突破、全面展開」にもほどがあります。
もう一つ、これは『朝日新聞』の「誤報」問題についても言えることですが、右派メディア、右派論壇人はいったいどのように「誤報」ないし「誤用」と「捏造」を区別しているのでしょうか? 誤報や誤用なら事実を指摘すれば足りますが、「捏造」であることを示すには『朝日』なり本多勝一氏なりの当時の主観的認識についても高度な蓋然性を持つ主張を行う必要があります。が、もちろんそんなことができた右派論壇人はいません。
以下は余談というか雑談のようなものですが、誤用・誤報を簡単に「捏造」へと変換してしまう右派論壇人の傾向は、旧日本軍の戦争犯罪を素直に認めようとする人間を「反日」「中国(韓国)の手先」だと考える傾向に通じています。ひょっとするとこれは、右派の方が「帰属のエラー」をおかす傾向が強いことを意味しているのではないでしょうか? もしこの仮説が正しいなら、右派が「自己責任論」を好んで採用することも同じように説明できそうです。いちおう、それらしき研究結果もあるようですが……。