こんなのが幹部に昇進できる組織を信用しろといわれても無理な話

内容的にはこれっぽっちも新味のない否定論の断片をアドホックにかき集めただけのクソ駄文ですが、問題はその書き手です。第7師団長を経て最終的に西部方面総監にまでなっています。田母神閣下を筆頭とする歴史修正主義者の(元)自衛隊制服組幹部というのが決して例外的な事例ではなく、自衛隊という組織には昇進レースにおいて歴史修正主義者を排除する意思か能力のいずれか/双方が欠けていることは明白でしょう。日本の近現代史に関する歴史修正主義者というのは、必然的にレイシストであり、また wishful thinking を平気でやらかす輩ですが、これらはいずれも軍隊という組織を一層危険な存在にする資質です。

それにしても、このクソ駄文、歴史修正主義的である以前に“金もらって文章書く”資格を疑わせる代物です。

歴史は、虹を見るようだと言われる。近くで見れば単に水滴だが、遠くから角度をもって見ると見事な虹に見える。歴史も同じで国によって見え方も違って当然だ。日本人は、人の見え方を言うのではなく、自らの目と頭で観ることが肝要である。

なにが「同じ」なのか意味不明ですね。「虹」のメタファーは例によって渡部昇一が右派論壇に輸入したもののようですが、どう考えたって「国によって見え方も違って当然」という結論を導けるようなメタファーではありません。

 ここで大切なことは、警察的な犯罪である「戦争犯罪」と国家の組織的な犯罪としての「犯罪国家」と明確に峻別することだ。

これもひどい。「国家の組織的な犯罪」は「国家犯罪」であって「犯罪国家」ではない(「犯罪」というカテゴリーと「国家」というカテゴリーの区別がついていない)上に、仮にも(事実上の)軍人が戦争犯罪を「警察的な犯罪」と理解しているとは……。

 また、少し前まで日本軍の代表的な残虐作戦として、殺し尽す、奪い尽す、焼き尽す「三光作戦」があったと言っていたが、今はあまりに荒唐無稽なので言わなくなっている。日本人の光という語源からはとても三光作戦のイメージは湧かないだろう。このように次々と中国の言う根拠は崩れている。

馬鹿ですね。中国人が命名した呼称に対して「日本人の光という語源」を持ち出してます。

 日本軍が規律正しい行動をしたがゆえに、日本軍の総司令官、松井石根大将は人道の罪のA級戦犯で裁くことができず、無理やりB級戦犯として死刑判決とせざるを得なかった。

どうせ言うなら「人道の罪」ではなく「平和に対する罪」ですし、松井が平和に対する罪に問われなかったのは、彼が(東京裁判が対象とする期間において)陸軍省の要職に就いた経歴がなかったからです。「規律正し」く侵略戦争をすれば、その責任者は平和に対する罪に問われうるわけで、「日本軍が規律正しい行動をした」という(それ自体嘘ですが)ことが通常の戦争犯罪でしか裁かれなかったことの理由になるはずがありません(失笑)
……と、目につくところをざっと拾っただけでもデタラメばかりです。安保法制に反対すべき理由には事欠きませんが、こんな人材が出世できる組織を信用すべきでない、というのはそれこそ政治的イデオロギーの相違を超えて万人が共有できる理由であるはずです。