NNNドキュメント'17「戦争のはじまり 重慶爆撃は何を招いたか」

さる5月21日深夜に放送されたNNNドキュメント'17「戦争のはじまり 重慶爆撃は何を招いたか」。一昨年の「南京事件 兵士たちの遺言」と同じく、放送時間が通常の約倍の拡大版。違うのは、今回は事前に番宣がなされたこと。やはり「南京事件 兵士たちの遺言」の好評が放送局に勇気を与えたということだろうか。
否定派のおかげでともかく話題になることは多い南京事件に比べ、日本社会の関心も低い重慶爆撃をとりあげることには、また別種の困難があったに違いない。空襲に関しては被害体験が広く共有されてきたことも、そうした困難の一つに挙げることができよう。重慶爆撃研究の先駆者である前田哲男氏へのリスペクトがあったところもよかった。
他方、「南京事件 兵士たちの遺言」と同じく気になるところもないではない。“日本軍の公文書による裏づけ”を前面に出している点だ。世間的にはむしろ好評を博した理由であるし、戦争犯罪の取材/研究における基本的な手続きの一つではある。しかし「敗戦後の文書隠滅で失われてしまった証拠」や「そもそも公文書というかたちで証拠の残りにくい犯罪類型」への想像力を喚起する工夫がもう少しあってもよかったのではないか。さもなくば「ほら、NNNドキュメントではちゃんと文書で裏付けをとってたのに、○○では……」という認識を招き、歴史修正主義を利してしまいかねないのがいまの日本の現状だからだ。


なお、掲示板で Teru さんが指摘(5月24日)されているように、ハル・ノート=最後通告のような紹介をしていた部分はちょっと不用意だったと思います。