『二十世紀研究』刊行についての『朝日新聞』報道

朝日新聞』のデータベースを用いた調べものをしていて、次のような記事があったことをいまさらながら知りました。

  • 朝日新聞』 2000年12月20日朝刊(京都2) 「20世紀考える雑誌、京大教授らが創刊 /京都」

 京都大学の柏倉康夫教授(当時)の呼びかけで年一回刊行の雑誌、『二十世紀研究』が創刊された、という記事です。そう、永井和先生の「陸軍慰安所の創設と慰安婦募集に関する一考察 」が掲載された雑誌です。

 創刊号には、「アメリカの世紀」という思想▽アンドレ・マルローのインドシナ▽陸軍慰安書の創設と慰安婦募集に関する一考察▽柳原吉兵衛の研究、の四つの論文が並ぶ。

 一方、「従軍慰安婦」をめぐる論争を取り上げたのは永井和教授(四九)。日本の「戦時総動員」体制の中で、慰安婦は最底辺に置かれた女性たちだったと指摘。戦時中の資料をもとに、国家による「公認」と「隠蔽(いんぺい)」という矛盾した姿勢の板挟みになっていたと考察した。
 「二十世紀は戦争の時代であり、また性に対する見方が大きく変わった時代。二つのテーマがクロスするところに、従軍慰安婦という問題があると思う」と話す。

「……と話す」とあることから、永井教授に取材したうえで書かれた記事であることがわかります。
ご承知のように、この論文では右派の定番の主張である「善意の関与」論の誤りが明快に説かれています。記事中で紹介されている論点も日本軍「慰安所」制度を理解するうえで重要なものであるのは間違いないのですが、この時点で『朝日新聞』が「善意の関与」論の破綻を広く伝えることに成功していたら、その後の“論争”の展開も変わったかもしれない……と思うとちょっと残念ですね。