「強制されたというなら兵隊さんも同じ」論の誤り

相変わらず「吉田証言」の一点突破全面展開的発想で大阪市長が愚行を繰り広げている今日このごろですが、「強制連行」を巡ってはもう一つ「強制されたというなら兵隊さんや従軍看護婦だって同じだ」という否定論があります。軍がつくった「慰安所」の規定で外出や廃業が「許可制」になっていることは否定し難いので、「兵隊や従軍看護婦だって自由にやめたりできない」というわけですね。
この論法が誤っているのは、「正当な根拠を持つ強制とそうでない強制」という当たり前の区別を無視しているからです。大日本帝国では兵役には憲法上の根拠があり、さらに兵役法という法的な根拠がありました。従軍看護婦についても、日赤の看護婦養成規則に有事の際の従軍の義務が規定されています。
これに対して、いかに大日本帝国といえども国家が帝国臣民(あるいは占領地の住民)に性労働を課す根拠となるような法などありません。改正野戦酒保規程は「慰安所」設置の法的根拠とはなりましたが、軍従属者である「慰安婦」に性労働を強いる根拠となるような法はありません。彼女たちを縛っていたのは事実上の奴隷契約である「慰安所」業者との契約か、そうでなければむき出しの暴力だったわけです。こんなものを兵役と同列に並べることができるわけはありません。