『戦史叢書』にみる(?)「陽高事件」

防衛庁戦史室の編纂になる『戦史叢書 支那事変陸軍作戦<1>』は312ページ以降の「察哈爾作戦 その二」において、陽高事件が起きた37年9月8日夜から翌9日にかけての関東軍(察哈爾兵団)の動きに触れている。

 八日、軍司令官は鎮宏堡―聚落堡〔陽高の西方、引用者注〕の線に追撃を命じた。混成第十五旅団は早くも同日鎮宏堡を占領した。九日、軍司令官は主力をもって聚落堡付近の陣地を攻撃するよう部署し、軍予備であった独立歩兵第十一聯隊もこれに加入させた。(…)

これだけ、である。9月5日のこととして「堤支隊は列車を利用して陽高方向に対する突進を準備させ」という記述はあるが、陽高占領にはまったく触れていない。まるで無かったことにしたいかの如く…。