“南京の真実”は政府の手で?

産經新聞 コラム・断 “南京の真実”は政府の手で(2007/03/10)

 アメリカの議会でマイク・ホンダなる下院議員が旧日本軍の従軍慰安婦問題を取りあげ、日本に謝罪を求める決議を出している。またドキュメンタリー映画「南京」が米国などで公開される。南京陥落70周年ということで、同じような映画が中国やカナダでも続々と作られ、世界中で上映されるという。
(中略)
 「南京」の映画に至っては、あきらかな反日キャンペーンであり、これは一種の情報戦である。南京事件については国内外ですでにさまざまな議論がなされてきたが、「日本軍の残虐非道な殺戮(さつりく)による犠牲者は20万人以上」という東京裁判での数や、南京の記念館では30万人という数が掲げられている。

筆者(富岡幸一郎)の発想によれば、『ホテル・ルワンダ』も反ルワンダキャンペーンの一環なんでしょうか。まあ、そう感じるルワンダ人もいるでしょうね。虐殺があったことを否定したいルワンダ人、とか。ところで、このコラム、文章もひどいな。「東京裁判での数や」とあるけど、これどこにもつながってないぞ?

安倍政権が戦後体制の克服をいうのであれば、南京事件に関して、政府として具体的に調査し、歴史の事実を世界に向けて明確にすべきだろう。日本でも「南京の真実」という南京攻略戦を検証した映画の製作が予定されているが、民間レベルだけでなく、日本政府が主体的に歴史的検証をなす必要がある。そうでなければ「主張する外交」など空語ではないか。

まあ「日本政府が主体的に歴史的検証をなす」のはいいと思うんですよね、私も。ただ、偕行社が調べたときだって南京攻略戦に参加した部隊の戦闘詳報は3分の1ほどしか見つからなかったわけで、軍法務部の記録も上海派遣軍の分は見つかってない。他方、第十軍法務部が多くの犯罪を「おとがめなし」ですませていたことを示す資料や、憲兵や法務官が表沙汰にならない事件の多さを認識していたことを示す資料なんかは見つかっている。捕虜の殺害と違って民間人の殺害や強姦は部隊が記録するはずもないから、本気で「主体的に歴史的検証をなす」のなら南京一帯での聞き取り調査(および生き残り将兵の聞き取り調査)が欠かせませんが、いまからそれができますかね? ドイツのようにもっと早くから手をつけておけば日本政府が主張する数字も説得力を持ったでしょうが。「中国代表が38年2月に国連で“2万人”と言っていた」なんてものを「一次資料」と称して主張しようものなら、赤っ恥を晒すことになってしまいます。