懲りないやっちゃなぁ Part II

たいしたはなしではないんだけど、先方がコメント欄閉鎖しているもんで(実際のアップロードは4月24日)。

あと、資料資料といって五月蠅く南京大虐殺はあったというApemanさん、じゃあ同じ話を私のリンク先の佐藤守さんにコメントすればいいじゃないか。

うん。だからエントリ書いて向こうにトラックバック送ったんだけど、それじゃ不足ですか? こんなこと書く以上、「映画『南京』補遺」とその前提である「映画「南京:戦線後方記録映画」」という二つのエントリのコメント欄に私のコメントがないことは確認しているはずだけど、それならトラックバックがあるのに気づいてもおかしくないよね? つまり、私はちゃんと「その根源の佐藤守さんに議論を持って」いっているが、佐藤氏からの反論がないのが現状なわけで、これ以降の私に対する誹謗は事実無根。撤回を要求します。

で、南京事件についての佐藤守の主張がデタラメであることは、4月18日付けのエントリでちゃんと説明してある。具体的に言えば次の部分。

場内警備で残ったのは、京都と奈良の連隊、約4500名、それに対する南京市民は20〜25万だという。勿論外人も同居している。こんな圧倒的な戦力不足の状況下で30万人もの大量虐殺をしたというのであれば、このようなシーンは絶対に撮影できなかったであろう。

第16師団を城内警備に残して他の部隊が移動していったのはもちろん17日の入場式のあとで、事件を構成する犯罪類型のうち捕虜の殺害なんかは多くがそれ以前に行なわれているし、そもそも虐殺の大部分は城外でおこなわれている(そして東京裁判でもそう認定されている)のだから、上の引用部分はまったくのナンセンス。

たとえが悪いが、ヒトラーが演説して、ヒトラー万歳といっている一般人一人を突然拉致してぎゅうぎゅう問いつめるよりも、ヒトラーに向けて言うべきじゃないのか。もし本当に私の思うことがヒトラー的ならば。

ほんと、たとえが悪いよ。エントリ書いてトラックバック送るのが「突然拉致してぎゅうぎゅう問いつめ」ることになるのか?

まあ、だいたいに置いて、すでに愛蔵太さんに要求されていることすら未だに調べないで結果も出さず、次から次へとグチャグチャけんかを仕掛けているそのメンタリティが私には理解不能である。

いったいどの件を指してるのかよくわからんけど、事態がこう↑見えるというのは党派的な評価に過ぎんから(だって根拠どころが、具体的になんのはなしかすら明らかにしてないもの)、こっちは痛くも痒くもありませんな。むしろ「相手は賊なんだから、本来国際法としては極刑が当たり前」などと平気で言う人間に肩を持たれたほうが迷惑じゃないかな。

Apemanさんも、私としては私のお金払って得たブログスペースになんでやってきて自分の信条だの宗教だのまで開陳されるのか、非常に損した気持ちを今でも持っている。

なに言ってんだよ? まさか自分のほうからケンカ売ったこと忘れてるんじゃないだろうな? 他人を「頭の中の鶏を個人で飼っている人」呼ばわりしたらリアクションがあることくらい覚悟しておけよ。

第一、無神論者と書かれた瞬間、ああこいつに何を言っても無駄だと思った。

ん? なんのこっちゃ? と思ったら…そりゃ私じゃなくてmujinさんのコメントだろうが。しかもあんたが「小説家は神様ではないので」と書いたことに対する皮肉として「私は無神論者ですので、あなたを神様であるとは認識しておりませんが、あなたはご自身の考えを他人に伝えるために必要な最低限の説明を省略なさるので、非常に困ります」と書いてるだけなんだけどな。

 無神論者、科学的歴史はそれを無視している。まだそういう人たちの科学は別の分野、脳科学とか精神医学の科学から30周ぐらい遅れている。
 だから、ああ、だからダメなんだと思ってたら、なんか例の資料が『発見』されたけれどよく見ると河野談話以前から公開されていたなんて話も出てきている。
 となると、朝日新聞とその研究者はしっかり調べていなかったのを棚に上げて見つけた見つけたと騒ぎ、朝日新聞の整理部もそれが重要だと思って載せたことになる。
 公刊資料すら目が届かない研究者に、歴史の真実など解明できるのだろうか。

さて、ぼちぼちこっちも本気出しますか。この人が歴史学とか「脳科学」をどのくらい知っているのか知らんけど、歴史学脳科学を較べて一方が他方に「30周ぐらい遅れている」とか言っちゃうセンスがなぁ…。キロメートルはキログラムより長い、と言うようなもんだよ。で、この人はまたしても朝日の報道をちゃんと読まずに書いている。朝日の報道には「発見」なんて言葉は使われていない。正確には「確認」とされている。

日本軍慰安婦問題をめぐり、東京裁判に提出された各国検察団の証拠資料の中から、占領支配したアジアの女性が日本軍に強制的に慰安婦にされたことを示す尋問調書などを、林博史関東学院大教授(現代史)が確認した。

なぜ「確認」とされているかというと、記者会見で紹介された資料の一部は過去に朝日新聞が報じているし、戦犯容疑者の尋問調書自体は以前から存在が知られていて、それを利用した研究も行われて来たから。この資料をネグってきたのは「軍の関与はなかった」と主張している人間であって、林博史氏らの研究者ではない。

南京では私ははっきり言って虐殺なんかやる暇はなかったと思う。便衣兵との戦闘はあったかもしれない。民間人の巻き込まれた戦闘もあったかもしれない。だが、当時の戦争はすでに過去のオスマントルコだのフビライハンの時代とは違うのだから、虐殺なんかやっているほど悠長なものではない。

ほらきましたよ。なんの根拠もない、思い込みによる否定論。あんたがどう考えようが、現に日本軍の戦闘詳報や将兵の陣中日記に捕虜を殺害したこと、敗残兵を狩り出して処刑したことが書いてあるんだけど? 反対に、南京攻略戦で便衣兵から攻撃を受けたなんて記録はないんだけど? だいいち、「オスマントルコだのフビライハンの時代とは違う」どころか、近代戦に不可欠な兵站すら確立せずに進撃したから掠奪を招き、それがまた民間人の殺害(敗残兵掃討に巻き込まれたケースは除く)や強姦を引き起こしたんだけど? 例えば第16師団(佐藤ブログに出て来た「京都と奈良の連隊」というのはこの師団の所属)は37年の11月13日に上海より50キロ(地図から私が目算)ほど上流の白茆口に主力を上陸させたが、輜重兵第16聯隊は上海経由でようやく11月30日に上陸、そのときには師団主力はすでに100キロほども進軍していた…というのが実情。第十軍の法務官は日記にこんな記述を残している(『ある軍法務官の日記』、12月11日。句読点を補った)。

丁度自分等が行軍せし時の行軍部隊は所謂大行李輜重隊、中には小砲等の進むを見たり。甚だしき部隊にありては疲労の為か支那人を連れそれに背嚢は勿論銃、鉄帽までも背負はせ、又その数多数に上り甚だしきは兵の数程も連れたるを見る。或る人曰く百鬼夜行の有様なりと。恰も日本兵の行軍やら支那土民の行列やら区別付かざる感なきにあらずこの点遺憾に思いたり。その支那人は命ぜらるる侭に多くの荷物を背負い中には相当老人も居たるを見る。既記の如く戦敗国の良民なる民程不幸なる者なしと。その場合我が兵の命が侭に従わず少しでも拒めば立ち所に遣られ万一逃げてその辺をうろつけば直に遣られ、支那人としては進退これ極まり、結局言はるるままに動かざるを得ざるに至る。

これでも「オスマントルコだのフビライハンの時代とは違う」と言えますか? アメリカの観戦武官はすでに上海戦の段階で、日本兵が乳母車や猫車まで徴発して装備を運んでいるのを目撃してますが? それに虐殺を行なったのは第一線の部隊だけではない。農村部での非戦闘員の被害はむしろ日本軍の後方部隊によるものの方が大きかった可能性もある。第十軍法務部の陣中日誌に記録されたある事例では、後方の警備部隊が中国人民間人を殺害したのだが、上で引用したのと同じ法務官の日記にはこうある(12月26日。句読点を補った)。

吉×××事件は十二月十七日金山に於て支那人間に稍々不穏の挙動ある如きことを聞き、直ちに部下数十名を引率し支那人部落に至り射殺斬殺を為したる事実にして、その間上官に十分連絡せざるのみならず、一つの好奇心より支那人を殺害せんとの念に基くとも認めらる。同隊は前線の戦闘に加わらず、従って支那人を殺さんとの一種独特の観念に駆られたるとも認むべく、戦場にては斯かる念を生ずるもの少なからず。又支那人に対する人格尊重薄きによるものの如し。

さあ、これでも単なる思いつきで「虐殺なんかやる暇はなかった」と言いますか?

あと、研究をしているとか論客を気取りたい人が資料資料と言うけど、思い上がりも甚だしい。資料化できないところに真実があることもあるし、真実と思って聞き取るとインタビュイーがマインドコントロール中国共産党が洗脳として発明した)の影響下だったりする。

そういうあんたの思い上がりこそ甚だしい。「資料化できないところに真実があることもある」なんてのは、きっちり現存する資料を調べた人間のみが言いうる言葉であって、資料を無視する口実に使ってはならない。マインドコントロール云々は例によって中帰連への誹謗なんだろうけど、南京大虐殺の場合日本軍および日本軍将兵当時書き残した資料だけからでも相当程度が立証できる。だいたい、帰国して拘束状態から脱して半世紀もマインドコントロールが続くなんてことはないし、もし続くと言うなら「大日本帝国」が行なったマインドコントロールも問題にしなきゃおかしいだろ? 戦友会が証言を封じるうえで果たした役割は秦郁彦のような右派の歴史学者だって認めている。

『部下を無事本土に帰してくれるのならどんな証言もする』と腹を切った将官も大勢いる。そういう個々のエピソードを拾わず、資料資料と資料第一主義を取る人がいるが、それってケンカで『それって何時何分何秒に誰が言ったんだよ』という口上の小学生のケンカと同じである。

って、あんたこそ「個々のエピソード」を拾ってないじゃん。南京事件に関するどの証言がそれに該当するのか、ちゃんといってみろよ。ネットで戦犯裁判の悪口書く人間は山といるけど、個別の事件を裁判資料等に基づいてきちんと批判している例なんてほとんどみないぞ。漠然と「インチキ裁判」ってイメージだけで非難してるのがほとんどだろ。

歴史について議論する、ましてや自分の今につながる人々への敬意がない資料第一主義は人を幸せにしない。そこらへんが、嗚呼無神論者といっている時点で俺様第一主義なんだなと思って透けて見えて、うるさいなあ、よそに来て自分のそんな浅い人生観を開陳するなんて恥知らずだな、とApemanさんについては愛蔵太さんより先に『ダメだこりゃ』と思った。

上述したように「無神論者」だと書いたのは私ではないので、ここでの誹謗の撤回と謝罪を要求します。それから「愛蔵太さんより先に『ダメだこりゃ』と思った」ってのはなんですか? あなたタイムトラベラーですか?

まああの頃はコメント欄あけたらどうなるかなと思って実験して、結局ダメだったので凍結したけど、まあ最近は小学生でもコメントをつけられる時代なので、ちょっと地位のある人にコメントをつけると自分がその地位に近づけたような錯覚をする馬鹿が非常に多いようだ。

そうか、あなたは私の「地位」に近づこうとして「頭の中の鶏を個人で飼っている人もいるようです」とか言い出したわけですな。それともコメントとトラックバックはこの点で全くちがう、とでも言い張る?


追記:

 そういや昔、陸自の人に取材して、ゲーム『大戦略』の話になって、エリート兵って一般兵より足が速いことにゲームではなってるんですけど、熟練した選抜部隊と一般部隊で行軍速度が変わるなんて事ないですよね、といったら、うんにゃあるよ、といわれた。
(http://d.hatena.ne.jp/jyl2142/20070424#p2)

素人が思い込みで決めつけることの愚は経験済みなのに懲りてなかった、ってことね。