産經新聞は訂正したが…

米軍が日本政府にRAAの設置を「命令」したという捏造記事は無事産經新聞紙上では訂正された。yamaki622さんが当該箇所を紹介しておられる。で、肝心の古森記者はどうか…とおもってブログをみてみたが、いまだにこういう記述がそのまま残っている。

大本営参謀で戦後は明治薬科大学の理事長などを務めた高橋正二氏の報告を続けます。高橋氏は終戦直後に米軍と直接、接触する「有末機関」の一員だった貴重な体験を経ています。
その有末機関時代に米軍は日本側に売春宿の開設や日本女性の売春婦としての徴用を命じた経緯が証言されています。
軍隊とセックスというのは、なにも日本軍だけが例外だったわけではないことの証明といえましょう。

しかしAPの記事が「許可」となっていたのに「命令」にすり替えちゃったのと同じく、実は高橋正二氏の証言を読んでも米軍のイニシアティヴで、米軍の「命令」でRAAができたとは言えないんですな。「軍隊とセックスというのは、なにも日本軍だけが例外だったわけではない」なんてことは誰も否定していないのであり(だから、といって従軍慰安婦制度を免罪するか、それとも軍の論理全般を批判するか、が分かれるだけ)、そのうえでなお日本軍の戦地売春への関与は独特だったのではないか? というのがいわゆる慰安婦問題であるわけで。


他方、22日付けのエントリでは慰安婦のロマン化というこれまた古くさい手を使っておられる。

なおこのビルマ篇のあちこちに慰安婦に関する記述が出てきますが、従軍慰安婦という言葉は一回も出てきません。

これには失笑するしかない。

ラングーンの月夜に日本軍将校と言葉を交わす朝鮮女性の慰安婦たちの描写からは「性的奴隷」というイメージは伝わってきません。

昭和28年に従軍記者がそのような視点をもち得たとしたらすごいなぁ…と感心したでしょうが。もちろん、すべての慰安婦が「性的奴隷」としか表現しようのない状況におかれていた、と考える必要はないでしょう*1。だからといって、戦中世代の男性の女性観というフィルターを通した描写をそのまま鵜呑みにすることもやはりおかしい。しかも、引用された部分では明言はされていないが、その後彼女たちが悲惨な目にあったであろうことは十分予感させる記述なのである。

あの時、危いから早くラングーンを逃出すようになぜ話してやらなかったか――私はジャングルの月に向って自問自答して見た。そうだ。あのころまでは、私はまだ軍人だった。軍紀がこわかった。――これから俺は人間に返る。――

*1:日本軍の慰安所制度の個別性に注目する観点からは。