『満州事変から日中戦争へ』

岩波新書の「シリーズ日本近現代史』の第5巻、加藤陽子氏による『満州事変から日中戦争へ』。ちょっと前に読み終わっていたのだがとりあげそびれていて、なんというか間が悪くなってしまったのでごく簡単に。帯に「満蒙権益とは何だったのか」とあるように、1930年代の日本の対外政策を規定した「満蒙権益」なる概念を軸として日中の(そして日米の)対立を解説。軍部は日本の主張する権益の根拠がかなりあやふやであることを知りつつ、国民に対しては1点の曇りもない日本の要求を中国が拒絶しているかのように訴えた。これが中国に対する強硬な世論をつくり、後々日本の選択肢を狭めてゆくことにつながるわけである。日中戦争の泥沼化が誰の目にも明らかになっても撤退を決意できなくなるほどに。まるで今のどこかの国を思わせるが、大きく違うのはそのどこかの国を軍事的に圧倒する存在は今日存在しないこと、だ。