軍隊と性

先日言及した『知られざる証言者たち』(平塚柾緒編、太平洋戦争研究会著)には、大和の元乗り組み員が古兵、下士官による性行為の強要(「太股スマタ、尻・肛門、尺八、手の四つのうちのどれかで“女”をつとめさせられる」)について証言した部分が収録されている。私と同世代の人なら「海軍=ホモの巣窟」というステレオタイプ*1を逆手にとった Village PeopleIn the Navy をまずは連想するんじゃないかと思うが、この種の行為がどの程度一般的だったのかはともかくとして、男ばかりの閉鎖的な環境(他には刑務所など)についての各種情報を総合するに「滅多にないこととは言えない」のは確かなようだ*2。一方ではホモソーシャルな集団の典型、つまりはホモフォビアがもっとも激しい集団の一つである軍隊において、兵士たちはこういう現実とどう折り合いをつけているのか…というところが気になった。順番が逆で、同性間での性的搾取が起きやすいがゆえのホモフォビアなのだろうか?

*1:これが同性愛者へのハラスメントになっているだろうと思って当初は言及しなかったのだが。

*2:落語家春風亭柳昇の中国戦線従軍記『与太郎戦記』(ちくま文庫)には中隊長に性的行為を強要された体験が記されている。慰安所に行くこともできる環境で、その中隊長は妻帯者だったとのことだが。