近道はない(追記あり)
ビルマの軍事政権が民主化要求デモの武力弾圧に踏み切り、多くの僧侶、市民、そして日本人ジャーナリストにも犠牲者が出た件について、これまでのところ日本政府の対応について「もう少し毅然とした姿勢を」といったニュアンスの意見はあっても、それ以上の強硬論はあまりみあたらないようです(北朝鮮に対しては強硬論を唱えるメディアでも)。すでに2003年から人道援助を除く新規援助を凍結していることもあって、実効性のある選択肢がなかなか見つからないことも一つの理由でしょう。軍事政権をいち早く承認した日本政府の対ビルマ政策は、特に内外の左派(リベラル派)には評判が悪かったわけですが、一般論として「たとえ抑圧的な政権であってもパイプはつくっておくべき」という発想を否定してしまうこともできません。抑圧的な軍事政権をただ打倒しさえすればよい、というのであればさほど時間のかからない選択肢はあるでしょう。しかしその過程で、あるいは政権が崩壊した後の混乱のなかで発生するであろう市民の被害が、抑圧的な政権の速やかな打倒の代償として容認しうるものかどうか判断は難しい、ということをわれわれは最近もアフガニスタンで、またイラクにおいて目撃したばかりであるわけです。
とすれば、結局のところ「忘却」にあらがうことこそが一番求められることだ、ということになります。遠からず事態は表面上沈静化するかもしれない。その時にも今回起きたことを忘れないこと。「対話路線」が抑圧容認の隠れ蓑になっていないか日本政府を監視し続けること。
追記:ブクマコメントより
2007年09月30日 good2nd ビルマ民主化, 国際 HRWなどは日本ももっと影響力を行使せよとは言ってますが…/「人道的介入」とかいう話にはならないでしょうしね
日本政府に「もっと影響力を行使」する意思がないのか、それとも能力やリソースがないのか…については正直なところよく分からないんです。「もっと影響力を行使せよ」という主張自体にはなんの異論もないんですけど。「舐められてる」と指摘する意見もある一方、現時点ではたいした額の援助をしていないというのも事実のようなので。「現在」の援助額は少なくても「将来」をひきあいに出すことで影響力を行使することは不可能ではないはずですが、そのためには日本政府がビルマの人権状況について長期的に、一貫した態度でコミットするという姿勢を見せる必要があるでしょう。長井さんの死で噴きあがるだけでは「どうせそのうち忘れる」と高をくくられてしまうおそれなし、としません。