『昭和の名将と愚将』


コメント欄でゴニョゴニョ言いながら言及していた本。第1章から第7章の「名将篇」は『オール讀物』に連載されたもの。ま、そういうのが好きな読者がいるわけでしょう。新書化するにあたって「愚将篇」の第8〜第11章を語りおろし。
どちらもほぼおなじみのメンバーが並んでいる。以前にも触れたかもしれないが保坂氏が武藤章を高く評価しているのは特徴的なところ。その他、海軍の石川信吾、岡敬純の二人は知名度がかなり落ちる。半藤氏が「私が昭和史にのめり込んだ当初はふたりの名前さえ知りませんでした」と言っているくらいだから無理もない。「海軍善玉史観」を克服する過程で名前が浮上してくる軍人、ということになろう。


この種の本はさっさと読める反面、既知のネタばかりでがっかりということも少なくないのだが、二人が戦後多くの軍人に会って聞き取ったエピソードの紹介で初見のものがいくつかあった。半藤氏はともかく保阪氏の著作はそこそこ読んでいるのだけれど。当事者や関係者が亡くなることで、それまで公にしにくかったはなしもしゃべることができるようになった、ということだろうか。
興味深かったのは、亡くなる直前の松本清張が服部卓四郎の「服部機関」を調べ直していた、というはなし。