『月刊現代』7月号

立花隆の「私の護憲論 前編」、半藤一利秦郁彦保阪正康のトリオによる鼎談「白熱討論「靖国神社」 昭和天皇の怒りを鎮めるために」、A級戦犯だった東郷茂徳を父に持つ東郷和彦の「「靖国問題」の思考停止を憂う」と、保守系の論者をずらり並べたあたりに狙いというか意気込みがうかがえる。立花隆のは来月号に続く…ということなので、とりあげるかどうかは来月考えます。東郷和彦のはどうも回りくどいというか本音を隠しているっぽいんだけど、ほかの著作を読んだことがないのでちょっと判断が難しい。
というわけでおなじみのトリオによる鼎談について。


最大の読みどころはここでしょう。

保阪 でも残念ながら、今の時代に史実をみて、史実にこだわり、そして昭和史を史実からきちっと精査していこうという人たちは、その行為自体が左翼になってしまうみたいですよ。時に右翼ともいわれますが(一同苦笑)。

このブログでもおりに触れてとりあげてきたことだけど、ご本人たちの耳にも届いていたらしい。


ネタはこれくらいにして鼎談の核心はと言えば、今年の3月に出た『新編 靖国神社問題資料集』(国立国会図書館)の内容とその背後にある意図の分析、ということになる。私も以前指摘したように、靖国の側には「合祀社は国が決める」というタテマエが必要である一方、国としては「靖国が決めたこと」というスタンスをとらざるを得ないところに、本鼎談で指摘されているような諸々のマヌーバーがはたらく(厚生省援護局の旧軍人等の策動で)、ということになる。

半藤 (…)実際に読んで得た印象を率直に述べますと、靖国神社側は「戦犯合祀に関して国(厚生省)が積極的に関与していた事実を公表したかった」ということに尽きる。

ところが…。

半藤 おそらく、当初は「国の関与」をアピールするつもりだった資料集が、思惑に反して、合祀に至る経緯のほころび――A級戦犯をいかに巧妙な手法で滑り込ませたか――を暴露することになってしまい、「これはまずい」と思ったのでしょう。


もうひとつ気づいたのは、秦郁彦が東條の引き起こした陽高事件にけっこうこだわっていること。あまり知られていない出来事だけに、詳しく調べた人間としてのこだわりなのだろうか。確かに、犠牲者数は数百人規模とはいえ弁解の余地のない戦争犯罪でもあり、開戦時の首相の犯罪となればそれが告発された時のインパクトは小さくなかったと思われる。