A級戦犯の合祀手続きについて検討会(追記あり)

この問題については以前エントリを書いたはず、と思って確認したらちょうど4年前の今日だった。

 原口一博総務相は7日、靖国神社A級戦犯が合祀(ごうし)される過程で国がかかわった行政手続きに問題がなかったかを、国として初めて検証する考えを明らかにした。有識者や政務三役などによる検討会を近く総務省に設置する方針。靖国神社は合祀について「国の事務手続きに従った」と主張しており、過去の行政手続きが不適切だとされた場合、合祀の有効性が問われる可能性もある。
(中略)
 原口氏は7日の総務省政務三役会議で、71年の通知について「(合祀事務協力の)行政的な手続きが無効であるとすると、(その後にA級戦犯が)合祀されている史実自体が、歴史の事実と違うことになる」と指摘。「行政手続きに瑕疵(かし)があったとすれば、今までのものを塗り替えなければいけない。事実に基づいて検証をしなければいけない」と、行政手続きの有効性を見直す可能性も示唆した。

一宗教法人としての靖国神社は、国が過去の行政手続きについてなにを言おうが「うちには東條英機ほか14名の昭和殉難者が合祀されております」と言い張ることが可能ではあるが、政府が改めて“昭和31年4月19日から同45年8月4日までの、靖国神社合祀事務協力に関する諸通知”の無効を確認するとすれば、靖国神社としては従来通り「合祀者は神社が勝手に決めたのではなく国が決めた」と主張し続けるか、「合祀者は神社が決めること」という主張に改めるかの選択を迫られることになる。もっとも、前者が選択されたとしても、国は靖国の主張を否定することこそできるが、靖国に「国が合祀者を決めたと主張するな」と要求することはできないのではないだろうか。他方、靖国が「国の決定」を強調すれば国としてはその都度それを否定せざるをえず、合祀基準の(靖国神社にとっての)正統性が揺らぐことになるだろう。
またこの記事では(以前の上杉隆氏のルポでもそうだが)71年2月の通知以降に合祀されたA級戦犯が焦点化されているけれども、靖国神社合祀事務協力そのものが無効であったとされるのであれば71年2月以前の合祀者についても同じ問題は生じることになるのではないだろうか?


追記
コメント欄で言及した『週刊文春』今週号の記事「原口総務相靖国公式参拝」宣言」を読んできましたが、やはり原口総務相の狙いは“日本政府としては靖国神社A級戦犯は合祀されていないものと考える”という立場を明らかにすることで首相や閣僚が靖国参拝を行なえる環境をつくり、それを以て「無宗教追悼施設」案を封じること、のようです。
上述したように、日本政府がなにを言おうが靖国神社には「うちには昭和殉難者14名が合祀されている」と主張することが可能です。政府と靖国神社が互いにトボケあって対外的には「合祀されていない」と宣伝し、内向きには「合祀されている」を既成事実化するという、最悪の欺瞞をやってのける可能性を考える必要がありそうです。