ヘブロン暫定国際監視団

26日の朝日新聞朝刊国際面に載ったコラムだが、ざっと見た限りWeb版では掲載されていないようだ。

ユダヤ人入植者の暴力絶えず
国際監視団が抑止狙い巡回
 イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸の最大都市ヘブロンで、ユダヤ人入植者たちの暴力を記録する非武装の国際監視団が活動している。暴力を止める強制力はないが、「みられている」と認識させることで暴力抑止を目指す、地道な貢献だ。
 設立のきっかけは94年2月、ヘブロンで狂信的ユダヤ人が礼拝中のパレスチナ人多数を射殺した事件だった。国連安全保障理事会の勧告を受けてノルウェーなどがヘブロン暫定国際監視団(TIPH)を設立。国際部隊の介入を嫌うイスラエルも唯一、受け入れた。
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 灰色の制服姿のグロットハイム監視団長はノルウェー軍の准将。ビデオカメラと携帯電話だけを抱えてパトロールに出るのに同行した。
 ヘブロンにはイスラム教徒とユダヤ教との共通の先祖とされるイブラヒム(アブラハム)らの墓があり、「神が土地を自分たちに与えた」と思い込んだ過激なユダヤ人入植者たちが、パレスチナ住民を追い出そうとする暴力が絶えない。イブラヒムらの墓を擁する旧市街の商店街は、約8年前に入植者とパレスチナ住民の対立が悪化してから、ほとんどが閉店したままだ。
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 グロットハイム団長は商店街をゆっくりと歩き、顔見知りのパレスチナ住民と笑顔で握手。アパートの窓からのぞいている入植者がいると、監視団の存在を印象付けるかのように立ち止まった。「対話を求めているが拒否されている」と団長は話す。警備中のイスラエル軍に出くわすと任務を伝えて通過の許可を求め、低い姿勢に徹した。
ヘブロン=村上伸一)

ユダヤ人入植者たちの暴力」はテロルの特徴を十分に備えているにもかかわらず、厚生省元事務次官およびその家族の殺傷事件で早々に「テロ」ということばをつかったメディアがこれを「テロ」と呼ぶことは滅多にない。


丸腰の監視団だが過去には死者を出したこともあり、「ムハンマド諷刺画」事件に関連して事務所が襲撃を受けたこともある。このコラムを引用したのは近日中にアップする予定の「『「戦争」の心理学』(その2)」のためなのだが、もう一つこのコラムから連想したのはペシャワール会のメンバーが殺害された事件。伊勢崎賢治氏がそれを「事故」と評したことが一部で波紋をよんだようで、確かに明らかな犯罪を「事故」と呼ぶことに引っかかりを覚えるのは十分に理解できる。しかし他方で、こうした事件を「ほらみろやはり十分な装備の軍隊送らなきゃダメなんだ」という具合に利用しようとする動きがあることを想定した発言であろう、ということはふまえておくべきではないだろうか。