戦う相手を間違えてるよ


は〜そうですか、という感想に尽きると言ってもよいのだが。

「罪」というのが「犯罪」という意味なのだとすると、現在の日本において「ヘイトスピーチ」が「罪」でないのはその通りだし人権擁護法が(先の政府案のようなかたちで)成立したって「罪」ではないし、現在の日本においてヘイトスピーチ刑事罰の対象としようとする具体的で影響力のある運動は存在しない。だからなに?
他方、「罪」の外延を“倫理的な非難に値すること”と考えるならば、ヘイトスピーチが「罪」であることは私には自明であると思える。「ヘイトスピーチを含めて何かを発言することそのものは人間にアプリオリに与えられた所与の権利」だ、っていうならヘイトスピーチが「罪」なのも「アプリオリ」に決まってることですよ。この人は「アプリオリに与えられた所与の権利」が「何かを発言する」権利だけだ、とでも考えてるのだろうか?

もちろん、私はヘイトスピーチ歴史修正主義が間違っていると考えますし、そのような意見に対して反論もすることでしょう。しかしながら、それはかかる意見を「徹底的に周縁化し、無害なものにする」ために行うのではありません。あくまでかかる意見を私が間違っていると考えるがゆえに反論する以上のものではありません。もちろん、結果的にそのような意見が退けられ「徹底的に周縁化し、無害なものに」なる可能性は十分に予見しえますが、それは目的ではなく、あくまで結果にすぎないものです。

ヘイトスピーチが批判によって周縁化したとしてもそれはたまたまついてくる結果であるべきで、それゆえヘイトスピーチが周縁化しなくてもかまわないというのであれば、そんな腹づもりで行なわれる「批判」などアリバイづくりでしかない。世の中に「私が間違っていると考える」ものはたくさんある(そして私が間違っていることも多々ある)なかで、なぜある種の「間違い」はスルーするのに別の「間違い」はスルーせず批判するか、といえば後者について私が、「単に間違っているだけでなく有害である」と考えるからであり、「有害」であると考える以上それを周縁化することを目指さないのは欺瞞でしかない。あらゆる「間違い」をフラットに並べるような主張に私は与することができない。

もちろん、法規制を阻止するためには単に原則論をふりかざすだけではダメかもしれません。しかしながら、法規制を阻止するためにヘイトスピーチなどを法規制以外の手段を以って排除していくべきであるというのは暴論だと考えます。

「周縁化」を勝手に「排除」に書き換えておいて「暴論」って・・・・・・ねぇ。東擁護派が「場所を与える」ってことでなにを意味してるのかという問題にも通じるけど、私が「周縁化」ってことで考えてるのは具体的には否定論が『WiLL』くらいにしか載らなくなるようになる、ってことですよ(これは繰り返し明言している)。言い換えれば『諸君!』や『正論』の編集部が否定論者の原稿を前にして「これ載せるのはさすがに恥ずかしいよね」「売れないよね」と考えるようになる、ってこと。これだってずいぶんと生温いはなしではあって、革命が成功したら私は toledさんに粛清されちゃうだろうけどまあしかたない。で、こういうのは「排除」なんですか?

そして、前述のとおりヘイトスピーチが「徹底的に周縁化し、無害なものに」なっていないからといって規制をすべきであるという理由にはなりませんから、そのような反論を「居直ってるだけならヘイトスピーチに加担してるのといっしょ」などと断罪するのは、それこそ居直っていると言えるでしょう。

なにが「居直り」なのかさっぱりわからない。私が「居直り」と表現しているのは自分の主張が招く不都合な帰結に対して責任をもとうとしない態度のことなのだが。

そもそも、ヘイトスピーチを発言することそのものの何が間違っているのか理解できません。

ヘイトスピーチが「間違ってる」ことは認めてるんでしょ? 間違ってることをすることは「間違ってる」に決まってるじゃないですか。ヘイトスピーチを「発語行為」と「内容」にわけて後者だけ批判するなんてことが可能なの? というか意味があるの?


と、ここまで仕事の合間に書いてきて、buyobuyoさんがこんなエントリを書いておられることに今気がついた。

なんでid:furukatsu さんが崎山氏よりで論戦張るんだか分けわからんよ。ヘイトスピーチ法規制反対というのは俺はそれなりのシンパシーを持つことができる意見だが、この話の流れで議論することはまるっきり正気の沙汰ではないと思う。関係ないじゃんか?東君の固有名詞を完全に消して議論することを強烈にお勧めする。


こんな「擁護」は東君にとっても迷惑この上ないもののように俺は思う。

というのはこのエントリに「戦う相手を間違えてるよ」というタイトルをつけた時に念頭にあったことに非常に近く、そこまで筆が進む前に読んじゃったので丸投げさせていただきます(^^;