産経新聞の「捏造」

Yahoo!ニュース 「南京大虐殺記念館、信憑性乏しい写真3枚を撤去
MSN産経ニュース 「南京大虐殺記念館、信憑性乏しい写真3枚を撤去

南京大虐殺記念館、信憑性乏しい写真3枚を撤去


 中国・南京市にある南京大虐殺記念館が、信憑(しんぴょう)性が乏しいと指摘されていた写真3枚の展示を取りやめたことが17日、政府関係者の話で明らかになった。「連行される慰安婦たち」「日本兵に惨殺された幼児たち」「置き去りにされ泣く赤ん坊」の3枚で、日本の研究者らは南京事件と無関係だと指摘していた。中国が同館の展示について“是正”に応じたのは初めて。ただ、30万人という犠牲者数の掲示や“百人斬(ぎ)り”など事実関係の疑わしい展示多数はそのままになっている。
(中略)
 また、幼児たちの写真は、朝鮮現代史の学術書に掲載されたもので、匪賊(ひぞく)(盗賊集団)に殺された朝鮮の子供たちの遺体。赤ん坊の写真は米誌「ライフ」に掲載された報道写真で、撮影地は上海。いずれも南京の旧日本軍とは関係ないが、愛国主義教育の“模範基地”と指定される同館は「悲惨な史実」と紹介してきた。


 日本側は、事実無根だったと判明している“百人斬り”関係の展示品のほか、誤用や合成と指摘されている写真について、さまざまなルートを通じて撤去を求めてきたが、これまで同館は応じていなかった。
(後略)

強調は引用者。撤去されたという3枚のうち「置き去りにされ泣く赤ん坊」は「南京の旧日本軍とは関係ない」とは言えないのだが(上海に上陸した日本軍が南京へと進軍したのだから)、「撮影場所が南京ではない」と言えばそれはその通り。
さて問題は「事実無根だったと判明している“百人斬り”」という一句。最高裁で原告(「百人斬り」の両少尉の遺族)の敗訴が確定した訴訟の高裁判決は、次のように事実認定している。

南京攻略戦当時の戦闘の実態や両少尉の軍隊における任務,1本の日本刀の剛性ないし近代戦争における戦闘武器としての有用性等に照らしても,本件日日記事にある「百人斬り競争」の実体及びその殺傷数について,同記事の内容を信じることはできないのであって,同記事の「百人斬り」の戦闘戦果は甚だ疑わしいものと考えるのが合理的である。
 しかしながら,その競争の内実が本件日日記事の内容とは異なるものであったとしても,次の諸点に照らせば,両少尉が,南京攻略戦において軍務に服する過程で,当時としては,「百人斬り競争」として新聞報道されることに違和感を持たない競争をした事実自体を否定することはできず,本件日日記事の「百人斬り競争」を新聞記者の創作記事であり,全くの虚偽であると認めることはできないというべきである。

すなわち、あたかも白兵戦において「斬った」かのような報道、および東京日々新聞第4報(例の有名な写真が掲載されているもの)でそれぞれ106人、105人とされた「戦闘戦果」については「甚だ疑わしいもの」とされているわけであるが、他方この報道の背後に「「百人斬り競争」として新聞報道されることに違和感を持たない競争をした事実」があったことは否定できないとされてもいるのであって、裁判所の結論はどう考えても「事実無根ではない」である。産経新聞が独自の主張として「事実無根だ」というのであればそれは単なる誤謬であるが、こうした裁判所の判断を無視して「事実無根だったと判明している」などと書くのはそれ自体が事実無根の捏造と言うべきだろう。


追記:高裁判決の事実認定について。被告の本多勝一氏を含む研究者らは両少尉の「百人斬り」の多くが実態としては「据物斬り」であって白兵戦での成果ではない、ということを明らかにしてきた。この意味では高裁判決の言う通り当時の報道と実態の間には乖離がある。他方、「据え物斬り」であれば(実際に106人、105人を斬ったかどうかはともかくとして)必ずしも100人を超える殺人が不可能とは言えないこと、もこれまでの研究により明らかとなっている。この点が十分に認められなかった点では、被告側にも不満の残る判決であるかもしれない。訴訟の構造からいって、これ以上踏み込んだ事実認定をする必要がなかったのも確かだが。


再追記:「【主張】南京大虐殺記念館 問題写真撤去を第一歩に - イザ!」でもサンケいってます。