戦傷病者戦没者遺族等援護法の問題

ni0615さんが本日のエントリ「産経新聞が沖縄戦犠牲者感情を無視する卑劣漢の本性顕す。」でとりあげているのは、遺族年金が戦争体験についての証言を歪めているのではないか…という右派の勘ぐりの問題。実はこれ、上記『家永教科書裁判と南京事件 文部省担当者は証言する』においてもでてくる論法である。
むろん、人間のやることであるから戦没者遺族等援護法上の扱いが有利になるような方向へ証言を歪めることがない、とアプリオリに言うことはできないだろう。しかし(事実そうした事例もあったと仮定して、なお)次の3点を指摘しておきたい。

  1. この法律は、死の状況について粉飾する動機にはなりうるが、亡くなっていない人間を死亡したことにするといった虚偽の動機にはならない。沖縄戦で県民が被った被害の規模についての推定に影響を与えるような要因ではない。
  2. そもそも当時は「国家総動員」体制下だったのに、なんらかの形で日本軍に「協力」したとみなされた死者(およびその遺族)だけを特別扱いにしたのが問題なのである。いまになると「戦争の被害は国民が等しく受忍すべきもの」とか言われて補償請求却下さえちゃうんだから、なおさらである。
  3. 戦地での「名誉の戦死」にも実は少なからぬ粉飾がある。兵士の従軍記、回想記を読んでいると自殺した兵士を「戦死」扱いにしたといったエピソードがいくつも出てくるのである。