武士の情けで黙ってたんだけど、しかたない(追記あり)

これはまたみごとな馬脚ですね」というエントリを書いた時点で、ガメ氏が「裁判記録」なんて読んでないことについては確信していたし、他方で万万が一出てくるならそれはそれで私にとって大歓迎なはなしなのであえて黙ってたことです。しかしああも根拠レスな憶測を自分のブログのコメント欄で垂れ流されたのではたまったものではない(実質を伴ったコメントならどんだけあっても大歓迎なんだけどね)。私にここまでさせたのは自分たちである、ってことをよく噛み締めるように>b:id:gouk、taroly のお二方。

ごぼう」なひとびとのほうは、ブログ、読みました。
ドマジメなだけのひとなのかも知れないので、簡単に書いておきます。
プライベートモードのいちばん最後に出ていたメッセージ
岩川隆「神を信ぜず」立風書房(文庫はダメ)「末尾参考図書」に挙がっていると思うよ。
あれは送ってもらえるんです。行かなくてもダイジョブ」
もし自分でとれなければ、わっしはBC級戦犯の資料がおいてあるところへ今年はなかなかいけないが、そこへ行ったら資料を送ってあげられると思う。
英語だが、読めるでしょう?
(ガメ氏のエントリ、「ヒラリー・クリントンの奇妙な提案」より)

1976年刊のこの本、私の手元にあるんです。でも、ないんです。なにがって? この本にはそもそも「末尾参考図書」ないしそれに類する文献一覧などないんです。さらに、この本には3編のルポが収録されてるんですが、扱われているのは米軍の爆撃機パイロット殺害事件が二つ、それからシンガポールのイギリス軍事法廷で裁かれた事件で、「バターン死の行進」も日本本土の捕虜収容所も関係ないんです。つまり、“バターン死の行進の最中に、ゴボウを食べさせて死刑になった日本兵”の「裁判記録」がこの本によって明らかになる、なんてことはないんです。
つまり、なにもかもでまかせだった、ということですよ。


追記:蛇足と言えば蛇足なんだけど、ここまできたら徹底的に。「フェアプレーにはまだ早い」ってことで。『神を信ぜず』の「あとがき」には「戦後これらの裁判記録はいくたびか法務省を通じて各国に要求されたが、フィリピンをのぞいてはコピーさえもよこしていない」(251ページ)、「BC級戦犯裁判の資料については、かなりのものが法務省大臣官房司法法制調査部に保管されていることが知られている。しかし、これらの資料はいまなお一般には公開されていない」(255ページ)とあります。つまり、70年代にはBC級戦犯裁判の「裁判記録」はほとんど利用不可能だったんですね。こちらも「本文中に言及があるのを読み落としているかもしれない」「バターン半島で起きたことならひょっとしてひょっとするとフィリピン主催の法廷かもしれない」とは思ったからはっきりとは言わなかったけど、どの「裁判記録」かは『神を信ぜず』を見ればわかる、というのはことほど左様に異様な釈明なんですよ。