荒舩清十郎の講演?

関東大震災時の朝鮮人虐殺について、国会ではどのような議論がなされてきたかを調べていてたまたま発見。1990年(平成02年)06月01日参議院内閣委員会での発言。

○吉岡吉典君 官房長官出席の委員会ですので、今話題になっております朝鮮人強制連行問題について最初に少しお尋ねしておきたいと思います。
 まず最初に、次の三点についてお答えを願いたいと思います。それは、強制連行問題の調査ではこれまでこれに関連することで政府は調査なさってきたことがあるのかどうか、これが第一点です。第二点は、名簿はともあれ、強制連行した朝鮮人の人数の概数ぐらいは現在わかっているかどうかということです。三番目の問題は、この調査というのは、名簿づくりだけなのか、それとも朝鮮人の強制連行の非常にひどいやり方、また連行されてきた在日朝鮮人がいかに大変な苦難を強いられたか、こういうことをも含めて調査なさるのかどうなのか。以上三点、簡潔に結論だけで結構ですから。
(中略)
○吉岡吉典君 私は今の報告を聞きまして、概数さえもわからないということを聞いて、日本政府は今まで調べようとも全然してこなかったことがこれで明らかになったと思います。
 資料が散逸したとおっしゃいましたけれども、残っている資料によっても朝鮮人がどれぐらい運れてこられたかということの概数は、民間人は戦後ずっとこの問題を研究してきまして答えをいろいろと出しております。私も三十年ほどこの問題をやってきました。ですから、いろいろな数字もあることも知っております。例えば、政府関係の資料によっても、百五十一万九千人以上の朝鮮人が強制的に連れてこられたという統計も、試算することができる政府の統計もあります。例えば、そのもとになる朝鮮総督府の資料なんか活字になって出て、ちゃんとこれは国会図書館にもあります。それから、人数がこういうのに比べて少ないのですが、公安調査庁が一九五三年に「朝鮮人労務渡航状況調査表」というのを「在日朝鮮人の概況」という本の中でも彼らは出しております。
 先ほど日韓交渉でいろいろ論議があったという話がありました。このときには数字を挙げての話があったと私は推測しております。というのは、まさに日韓交渉の真っ最中に、元運輸大臣であった荒舩清十郎氏、故人ですけれども、この人が行われた講演があります。これは一九六五年十一月二十日の講演の一部ですけれども、徴用工に戦争中連れてきて成績がよいので軍隊に使ったが、この人の中で五十七万六千人が死んでいる、またこの間予算委員会でも問題になりましたが、朝鮮の慰安婦が十四万二千人死んでいると、こういう講演をなさっております。ですから、こういう数字を講演でしゃべれるということは、日韓交渉の過程で具体的な数字を挙げての交渉があったということだと思います。そんなものをもう忘れ去って概数さえもわからないというのでは、日本が朝鮮で行ってきたことについていかに反省のない態度をとり続けてきたかということを示すものだと私は言わざるを得ません。
 また、ハーバード大学のワグナーという教授が「日本における朝鮮少数民族」という本を書いております。これはGHQの資料も使って書いたものですが、この本によりますと、それまでに日本に来ていた者に加えて戦争中の八年間で百二十五万名の朝鮮人が産業に追加投入されたとこのワグナー教授は書いております。こういうふうに概数はいろいろな言い方があります。しかし、全くわからないということでは私は全然話にならないというふうに思います。
 同時に今、官房長官は名簿を求められたから名簿を提出するという話でした。外国に植民地支配を行い、相手に非常に大きい被害を与えた国として、求められたものを出すというだけでは私はいかぬと思いますね。在日朝鮮人はどういうふうにして日本に連れてこられたか、この日本への連れてき方というのはまことにひどいものなんですよね。

「この間予算委員会でも問題になりましたが」というのは調べた限りでは同年5月30日の参院予算委員会で、竹村泰子議員が官房長官に「従軍慰安婦の調査もなさいますね」等の質問をしたことを指すようだ。荒舩清十郎の「講演」については2年後にもとりあげられている。1992年(平成04年)03月21日参院予算委員会

清水澄子君 ぜひそれは、今後の調査の中で具体的に菊〔ママ〕調べいただきたいと思います。
 それは、あの日韓条約協定のときの特別委員でありました自民党の荒松〔ママ〕代議士が、同じく一九六五年の十一月二十日に秩父の地元の厚生会館で行った演説が雑誌にずっと載っているわけですけれども、その中に日本の軍隊が朝鮮慰安婦十四万二千人をやり殺したという、こういう話が出てまいります。非常に具体的な数字でございますが、よくこの慰安婦は十三万から二十万と言われているわけですけれども、当時、日韓条約協定特別委員の方であり、その翌年は運輸大臣になっていらっしゃる非常に政治的にも地位の高い方がこういう発言をしておられるわけですから、政府はこれを裏づけるような資料をお持ちであったのではないだろうかと思いますが、これについての当時の調査があったのでしょうか。もしないとすれば、今後調査をしていただくということをお願いいたします。

「雑誌」というのがどれなのかわからないのが残念。