『満州事変と政党政治』

NHKは今年4回シリーズで「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」を制作、放映したわけだが、そうなると気になるのはもう一つの問題である「日本人はなぜもっと早く戦争を終わらせなかったのか」をとりあげたシリーズが制作されるのかどうか。やるとしても4年後になっちゃうのかな。


さて、その「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」の第2回、「巨大組織“陸軍” 暴走のメカニズム」と扱う時期や主題が重なっているのがこの本。

こちらの方は32年の斉藤実内閣成立までの時期しか扱っていないという違いはあるが、永田鉄山をはじめとする一夕会のメンバーに焦点を当てている点などは「巨大組織“陸軍” 暴走のメカニズム」の前半と同様である。しかしNスペを見た人と本書を読んだ人とでは、同時期の日本の歴史についてずいぶんと違った理解をもつのではないだろうか。ごくおおざっぱに言えば、本書の歴史記述の方が一夕会メンバーたちの「責任」を強調したものとなっている。もちろん、こうした違いの一つの要因として、本書では統制派と皇道派の対立が明確になる時期が扱われていない*1こともあるだろうが、より本質的なのは異なる歴史記述が戦争責任についての異なる理解をもたらしうる、ということだろう。

*1:ただし、永田鉄山荒木貞夫や小畑敏四郎らの構想の違いについてはとりあげられている