コピペ戦士 hunter くんの置き土産について、補足
昨年の1月に拙ブログに登場したコピペ戦士 hunter くんのことはみなさまとうにお忘れかと存じますが、彼がここで持ち出したデマ、「実際に米軍が「神奈川県」に進駐してきた最初の10日間に、県下だけで既に1336件のレイプ事件が発生したという事実がある」についてその後判明したことがありますので、ご紹介しておきます。コメント欄では dj19 さんから「そのhunterという人は以下のBLOGOSにある記事からパクって、まるで自分の意見であるかのように細工しコメントしただけ」とのご指摘があり、パクリ元のエントリも特定されていました。ところが、先日吉田裕さんの『現代歴史学と軍事史研究 ■その新たな可能性■』(校倉書房、2012年)を読んでいたところ、あの東中野修道センセーも似たようなことを主張していたことが判明しました(第II部第3章への付論1、「破綻した南京大虐殺の否定論者たち」)。
以上のような詐術的手法に加えて、東中野氏の学者としての資質に疑問を抱かざるをえないのは、氏が資料の改竄を行っている事実である。東中野氏は、『「ザ・レイプ・オブ・南京」の研究』の中で、敗戦直後に日本に進駐してきたアメリカ軍は、一九四五年八月三〇日の一日だけでも、神奈川県下だけで三一五件の強姦事件をひきおこしたと指摘し、右のシンポ*1でも八月三〇日から九月一〇日までの一二日間で、一三二六件の米軍による強姦事件が発生したと強調している。占領には強姦がつきものだといいたいのだろう。
ところが、同書の中で氏が参考文献としてあげているドウス昌代『敗者の贈物』(講談社、一九七九年)をみてみると、確かに三一五件、一三二六件という数字が「米軍による事件発生数」としてあげられてはいるが、ドウス氏は、「このうち、何件が強姦事件だったかは、はっきりしない」と明記しているのである。それが東中野氏の手にかかると、たちまちのうちに、三一五件、一三二六件の強姦事件に早変わりしてしまう。
(270-271ページ)
実は『敗者の贈物』における1326件という数字が「強姦だけでなく窃盗なども含めた事件の総数」であることは、先ほどのコメント欄で gansyu さんにより指摘されています。当ブログのコメント欄は東中野センセーよりも学術的な水準が高い、と言えそうです。この機会に投稿者の方々にお礼申し上げます。
もっとも、ドウス昌代氏の著作にももともと問題はあったようです。
それでは、実際にどれだけの強姦事件が発生していたのだろうか。九月八日付の神奈川県知事の内務大臣宛報告によれば、九月五日の段階で県当局が知りえた県下における米軍による「事故発生」件数は、八月三〇日から九月五日までの類型で八二一件、このうち強姦事件は未遂二件を含めても合計六件であり、他は自動車、武器、物品などの強奪事件である(粟屋憲太郎・川崎高峰編『敗戦時全国治安情報(2)』日本図書センター、一九九四年)。そもそも、ドウス氏の著作自体が典拠も示さずに断定的に叙述するという問題を持っている。そうした著作をさらに改竄して使用する東中野氏に、はたして学者としての資格があるのだろうか。
(271ページ)
なお、この「付論1」は当初『週刊金曜日』の2000年2月11日号に掲載されたものですが、吉田氏によれば東中野センセーはその後「吉田宛の書簡」において「ドウス氏の著作からの転記ミス」だと釈明したそうです。