92年当時のアメリカメディアの反応

92年7月21日の『朝日新聞』朝刊「論壇」欄に、当時米バージニア州在住だったジャーナリスト、有馬佳子氏が寄稿していて、当時のアメリカメディアの「慰安婦」問題についての反応を伝えている。

 アトランタ・コンスティチューション紙(一月一六日)は、本件が明るみに出た時点ですぐ、「日本が愛されない理由を知りたければ」と題する社説を掲げた。残虐行為に対する糾弾もさりながら、日本人にとって耳が痛いのは、日本が嫌われる真の理由は、「その事実をこれまで否定・隠蔽(いんぺい)してきたこと」としている点である。同社説は日本の政治指導者に対し、謝罪に加え、この「戦後の嘆かわしい無神経さを深く反省すべきだ」と要求、本音の議論を繰りひろげている。

この「嫌われる真の理由」はいまだ健在のようですね。原発事故に関する日本政府の対応を見る限り。

 (……)ウォールストリート・ジャーナル紙は(……)七月八日紙面で「慰安婦問題はとくに不快である」と断じている。
 「ドイツはナチの過去を暴くことを国家目標の第一としてきたのに対し、日本はその帝国主義的行為を忘れる集団的努力を払ってきた」というこの一文に、日本が軍国主義帝国主義の真の清算を行っていないことに対する特段の反感が込められている。

WSJが「帝国主義」という言葉を使って非難するとは、なかなか胸熱です。WSJの論調の紹介はまだ続きます。

 しかも、この努力の欠如ゆえに日本は経済力に見合った政治力を発揮できないという代価を払ってきたという。この社説は、米国がアジアへの軍事配備を削減させていることもあって、日本が安定的な政治力を持つ国になることが望ましいとする一方、日本がその歴史を再考する必要を感じていない以上、これには長い時間がかかるであろうと結んでいる。

これなど、およそ四半世紀たったいまでもそのまま通用しそうです。

 さらに、ロサンゼルス・タイムズ紙(七月八日)社説は、日本が過去の侵略と残虐行為を直視することを拒むことで、海外に不安感を、内に自己欺瞞(ぎまん)を増幅させてきたという。米国の新聞は、日本の軍国主義時代の行為に関する教科書の記述変更、教科書検定問題一般について、常に敏感に反応してきた。日米関係の表面に現れる経済摩擦の陰に、こういった日本人の「隠蔽する」「直視しない」姿勢に対する根本的な不信感があることは、日本人が真剣に見つめるべき事実である。

「経済摩擦」……懐かしい言葉ですね。当時の日本が国際社会から向けられていた視線を記憶している世代は、若い人々にきちんと伝えてゆくべきでしょうね。市場で存在感を増し続ける韓国製品、中国製品を見る時に「ああ、欧米人は数十年前にこんな経験をしたのかな」と思えるようになります。