「真珠湾」への言及にすら耐えられない日本政府

3月24日に行われたゼレンスキー・ウクライナ大統領のリモート演説。実施が議論され始めた当初右派は大はしゃぎだった。代表的なのがこれだろう。

要するに第一次湾岸戦争時の "Show the Flag" 発言の再来をゼレンスキー大統領演説に期待していたわけである。

そうした右派に冷水を浴びせたのが、アメリカ議会でゼレンスキー大統領が「真珠湾攻撃」に言及したことだ、というのはみなさん御存知の通り。歴史修正主義者が取り乱すだけでなく、日本政府も日本の国会では「真珠湾」に言及しないよう根回ししたという報道がある。

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 ただ生中継での演説になることで、日本側が事前にゼレンスキー氏の発言を把握することは難しくなった。演説内容を両国間で事前に調整することがほとんどないままとなるため、「日本企業はロシアから全部撤退しろと言うのでは」(閣僚経験者)という臆測や、「何を言い出すか心配だ」(自民幹部)と懸念する声もあがる。

 そうした懸念を少しでも払拭(ふっしょく)するため、ゼレンスキー氏の米国議会での演説内容を踏まえ、演説実施に関わった議員の一人はウクライナ側に「真珠湾攻撃には触れないでほしい」と要望したという。

ふつうに考えれば日本の国会で「真珠湾」に言及する意味はない(ロシアのウクライナ侵略と類似しているのは日本の対米戦争ではなく中国との戦争なので)ので杞憂もいいところだが、満洲事変や南京大虐殺731部隊ではなく真珠湾攻撃に言及されることにすら耐えられない、というところにまで日本政府は後退してしまったのか、と考えると空恐ろしい事態だ。対内的には東京裁判について好き放題文句を言う一方で対外的には東京裁判が下した評価を受け入れたふりをするという「ダブルスタンダード」(吉田裕)が自民党政府の基本ラインだったわけだが、長期にわたった安倍政権下でこの外面すら投げ捨てようとする志向が強まり、この欺瞞的な歯止めさえ失われようとしているのだろうか。