お返しに

青狐(bluefox014)さんが最近私が書いたエントリを3つ紹介してくださっているので、こちらは青狐さんのかなり前のエントリをばご紹介。

日本軍は、南京で一発の銃弾も打つ正当な理由がないはず
もはや首都ではなかった南京

もちろんコメント欄も興味深い。
さて、南京事件に関して「捕虜の殺害は不法だったかどうか」は否定論者がよく持ち出す論点であるし、また日中戦争全般について「侵略戦争だったか否か」も「大東亜戦争」肯定論者が通説に異を唱えるポイントである*1。しかしここで青狐さんが提起しているのは、南京攻略戦が法的にどのような意味を持つのか? という問題である。当時(今も)戦争それ自体は合法的だったから、議論は勢い(違法な)侵略戦争だったかどうか、また日本軍が戦時国際法にかなった行動をとったか、という方へ傾きやすい。しかし日本軍はあくまで「これは戦争ではない、事変である」と言いつづけた。戦争ではないのだとすると、中国における日本軍の軍事行動はどのようにして正当化されるのか? 上海への派兵は「居留民の保護」を名目としていたわけであるが、それに先立つ経緯を捨象してとりあえずこの名目を認めたとして、では日本軍は南京になにをしにいったのか? 南京に「上海居留邦人」がいるわけはない。軍中央も日本政府も、上海へ派兵した時点で南京攻略など考えていなかった。あたりまえである。他国の首都を攻略するのが「戦争」でなくてなんだろうか? あくまで上海周辺での軍事行動しか考えていなかったから、食料の補給や法務官、憲兵の配備が不十分でも問題ないと踏んでいたわけだ。上海で中国軍を敗走させた時点で、「居留民保護」という目的は十分達成されたわけである。にもかかわらず、上海派遣軍と第十軍は進撃を続けた。

コメント欄では例によって野良猫氏がしたり顔でこう書いている。

一度はじまった戦争は、停戦条約が締結されるまで続くものです。

だが、当時の日本軍にとって(また中国軍にとっても)表向きこれは「戦争」ではなかった。「上海居留法人保護」のための行動でもなかった。では一体なんだったのか? 便衣兵の処刑が合法か違法かという以前に、中支那方面軍の行動すべてがそっくり法的根拠を欠いているのではないのか?

*1:ただ、日中戦争と「大東亜共栄圏」の理念とはいかにも折り合いが悪いので、あくまで米英との戦争を正当化することに専念する論者もいるようだ。