「張作霖爆殺=ソ連の犯行」説を紹介する櫻井よしこ

『「南京事件」の探究』(北村稔、文春新書)および映画『Nanking』についての櫻井よしこの発言についてはすでに青狐さんが批判しておられるが、今度は「捨身成仁日記」さんが櫻井発言をとりあげておられる。対象となる発言はこちら
だまされやすい人々
追記部分から。

この問題については、「Ongoing debate」の項目に記載され、進行中の討論であって、確立された見解でないことがまずすぐにわかる。「In the view of some modern right-wing authors」というくだりからすると、アメリカの右翼が日本のネトウヨよろしく歴史修正主義を発動しているという見方もできそうである。

ご推察の通りで。私のところにしょっちゅう来るスパムメールでアン・クールターの本を宣伝するやつがあるんだけど、それで見た記憶がある。例えばこれなんかですな。

(…)
Reexamining the sixty-year history of the Cold War and beyond―including the career of Senator Joseph McCarthy, the Whittaker Chambers?Alger Hiss affair, Ronald Reagan’s challenge to Mikhail Gorbachev to “tear down this wall,” the Gulf War, and our present war on terrorism―Coulter reveals how liberals have been horribly wrong in all their political analyses and policy prescriptions. McCarthy, exonerated by the Venona Papers if not before, was basically right about Soviet agents working for the U.S. government. Hiss turned out to be a high-ranking Soviet spy (who consulted Roosevelt at Yalta). Reagan, ridiculed throughout his presidency, ended up winning the Cold War. And George W. Bush, also an object of ridicule, has performed exceptionally in responding to America’s newest threats at home and abroad.
(…)
(強調引用者)

で、buyobuyoさんがスルーしておられる「張作霖爆殺=ソ連の犯行」説。

一つは、一九二八年に起きた張作霖の爆殺は、日本軍ではなく、ソビエトがやったということ。日本軍がやったように見せかけるのに苦労した、ということが書かれているが、これが事実とすれば、日本にとってはまさに驚天動地のことである。

これが真実なら昭和天皇をはじめとして陸軍、日本政府全体がそっくり騙されたことになりますなぁ。というか、まずもって河本大作をどうやって騙したのかが知りたくてたまらない(笑) たしかに「驚天動地」だ。それに比べたら犯行を日本軍によるものと見せかけるくらい、どうってことないでしょう。というか、河本たちは中国人の仕業に見せかけようとして失敗したわけだけど、ソ連はそういうややこしい工作をしたのか(^^?

ついでなのでその他の点についても。

もう一つは、一九三七年七月七日の蘆溝橋事件後の動きである。蘆溝橋と上海との間は何百キロも離れているが、事件後、あっという間に戦火が上海にまで飛び火し、中国全土に広がった。こんなに中国全土に戦争が広がっていったのは関東軍が悪いからだ、とずっと私などは教えられてきた。関東軍は近衛内閣の不拡大方針にも従わず、要するに暴走してしまったというのが日本では定説になっている。

まあたしかに関東軍を悪役にする見方は自民党の幹事長にすら受け入れられているわけだけど、まさか学校を出てから日中戦争についてのまともな本を一冊も読まなかった(にもかかわらず、南京事件その他についてあれこれと語ってきた)わけ? 盧溝橋事件にからんでるのは支那駐屯軍だし上海事変は海軍陸戦隊と中国軍が衝突して始まったんだから、関東軍だけが悪いはずはない。だれに「教えられてきた」んだか。全面戦争化に一番慎重だったのは参謀本部の一部(石原莞爾とか多田駿)で、近衛は7月の華北派兵も認めちゃった(上海事変より先)し南京攻略前後でも参謀次長より強硬な態度だったんであって、確たる「不拡大方針」なんてありませんでしたから。

蘆溝橋事件は中国人が起こしたことが常識になっているが、そこから戦火を広げていったのも中国共産党の手先となった国民党軍の司令官だった。しかも中国共産党ソビエトの指令を受けていた。つまり、ソビエト中国共産党に国家を作らせようとしていたから、中国共産党軍が消耗してしまうのは好まなかった。また毛沢東も自分たちの軍隊が戦って損傷を受けるのを好まなかった。そこで結局、彼らは国民党と日本軍を戦わせ、両軍ともへたへたにしてしまい、自分たちの政府を樹立しようという戦略をとったのである。

「第一発」を撃ったのが中国側(第29軍)だというのは確かに定説だけど、無通告の夜間演習で空包撃ったことまで含めれば日本軍が先だし、牟田口聯隊長が攻撃命令出さなければ特務機関による交渉ではなしはすんでいたはず。また、本格的な武力衝突後も現地では停戦交渉がまとまっていたのであって、それをぶちこわしたのが上述の華北増派決定。
中国共産党が抗日戦争の全面化を目論んでいた、というのは確かだけれども、別に日本に攻めて来ようとしていたわけではないんで、日本側に確たる「不拡大方針」があれば戦争になりようがなかったわけで。