『消えた細菌戦部隊』、『医学者たちの組織犯罪』

常石敬一、『消えた細菌戦部隊―関東軍七三一部隊』、ちくま文庫
 ―― 、『医学者たちの組織犯罪―関東軍七三一部隊』、朝日文庫


サブタイトルはまったく同じですな、こうして並べてみると。
さて、『消えた…』の方はこの分野の古典ともいうべき文献で、実際随分前に一度読んでいるんだけど、京極夏彦が新著で参考文献として使ってサヨク認定されてしまったのを機に読み直し。科学史家らしく「医学者の戦争協力」という問題関心が中心になっているわけだが、それをさらに展開したのが『医学者たちの…』。石井四郎がつくりあげたネットワークの広がりは、もはや「七三一部隊」の問題として語るのは不適切だ、と思わせるほど。その人脈の一端は薬害エイズ事件の際に取り沙汰されたわけだけれども、結局のところ「スキャンダル」の水準以上に議論が深められることはなかった。『消えた…』はともかく『医学者たちの…』のサブタイトルはもっと工夫されてしかるべきだったんじゃないだろうか(わかりやすい、というのは認めるが)。