検閲された長崎潜入ルポ、米で刊行

時事通信社 時事ドットコム 2006/12/28-14:50「 原爆の恐怖、生々しく=GHQ封印−米紙記者の長崎潜入ルポ、61年ぶり出版」

【シカゴ28日時事】原爆投下直後の長崎に潜入して執筆したものの、連合国軍総司令部(GHQ)の軍事検閲で61年間封印されてきた米紙記者のルポが「ファースト・イントゥ・ナガサキ」という本になってこのほど、米国で発売された。原爆症の恐ろしさを訴える医師らの生々しい証言に加え、軍事検閲をめぐるマッカーサー連合国軍最高司令官(元帥)と同記者の確執など興味深い資料が満載されている。

原題は First into Nagasaki: The Censored Eyewitness Dispatches on Post-Atomic Japan and Its Prisoners of War ( Crown Publisher, 2006 )。著者は Geroge Weller(長崎に潜入した記者)と Anthony Weller(ジョージの息子で作家だそうな)、2002年にジョージが亡くなった後息子が原稿のコピーを発見した、と版元のサイトにある。副題の後半をみて「あれっ?」と思われる方もおられると思うが、時事通信の記事では本書の一つの側面が落とされている。上記版元サイトの宣伝文より。

Weller also became the first to enter the nearby Allied POW camps. From hundreds of prisoners he gathered accounts of watching the atomic explosions bring an end to years of torture and merciless labor in Japanese mines. Their dramatic testimonies sum up one of the least-known chapters of the war―but those stories, too, were silenced.
(...)
Along with reports from the brutal POW camps, a stirring saga of the worst of the Japanese “hellships” which carried U.S. prisoners into murder and even cannibalism, and a trove of Weller’s unseen photos, First into Nagasaki provides a moving, unparalleled look at the bomb that killed more than 70,000 people and ended WWII. (...)

この後にはウォルター・クロンカイトによる序文と書評が一つ掲載されているが、いずれも「原爆」と「捕虜」とをほぼ均等に扱っている。この記事を読んで現物注文したばかりなのでどちらがこのレポートにとってフェアな記述であるのかはまだわからないが。さらりと「原爆が戦争を終わらせた」と書かれているが、すでに広島で原爆の威力を日本に(そしてソ連に)アピールした後の、長崎への投下はアメリカ軍の論理に照らしてもより大きな疑問が残るはずで、にもかかわらず「ヒロシマ」ほどには語られることのなかった(と思う)長崎についての貴重な記録が発掘され公表されたことの意義は大きいだろう。