ある典型例

青狐さんのところに多数のコメントをしていたnatamaru123氏だが、氏のダイアリーを見るとカテゴリーがブロガー別で、各ブログに投稿したご自分のコメントをひたすらコピペするというなかなかユニークな内容となっている。現在リストアップされているのはArisanさん、bluedox014さん、CrowClawさん…とハンドルのアルファベット順なので次に狙われるのはあの人かな、とか思っているのだが。ここへのコメントはなぜかCrowClawさんに関するエントリの長大なおまけとしてコピペされている。

>あの”優しくて楽しい”父が激高するほどに、彼らの行いがひどかったという風に考えたほうが自然では?やさしくない人だったら、とっくにブちぎれているような・・・

なぜこの種の人びとは、すぐに日本側にも跳ね返ってくるであろうこういう発想をするんでしょうね? つまり米軍が日本兵火炎放射器で焼き殺したのも原爆落としたのも日本の「行いがひどかったという風に」考えた方がよいのでしょうね。通州事件も日本の「行いがひどかった」、シベリア抑留も「日本の「行いがひどかった」…と。

>やさしい父っていうのは普遍だよね?だったら朝鮮人や中国人に相対したときも”やさしい”彼だったんじゃないの?

「人間」についてのごくあたりまえの常識を振り捨ててまで、彼は一体なにを守りたいのでしょうか。

で、「傷痍軍人」についての黒尼さんと私のやりとりについての部分ですが、私が「他方で昨今生活保護の不正受給が(実態以上に)騒がれることとの連続性もあるように思います」と書いた時に考えていたことが的中したように思います。根拠不明な被害者意識。まず黒尼さんの体験談はあくまで「傷痍軍人」に対する大人の態度についての印象が中心なんですね。別に小さい子どもがなけなしの小遣いを差し出したのに偽物だった、ってはなしじゃありませんから、「カモ」にされたわけじゃない。他方で偽物がいたとしても*1戦争で重い障害を負った人びとが存在することは否定し難い事実であり、たとえ「偽物」を通じてであれそうした人びとの存在に気づく機会を得られたのならそれはそれで一つの積極的な経験である。そこで「騙された」ということしか頭に浮かばないのは、比率としては僅かでしかない不正受給の事例を知って生活保護制度に罵声を浴びせる人びとと同じ発想であろう。
(以下追記:書き忘れてたけど、軍人恩給にも階級等で大きな格差があることを無視して語るあたりも、社会福祉批判言説と似ているような。)


梅毒云々についての部分も、黒尼さんのコメントの主旨についての理解を欠き、しかも自分にとっての「常識」にあわせて全てを裁断するという了見の狭さを暴露しただけである。黒尼さんと私のやりとりの眼目は「戦中世代が戦後世代に家庭などの私的な場で戦争をどのように伝えていたか?」である。してみれば、老人たちが語った武勇伝の真贋などはこの場合二の次であって*2、真偽はともかくそうしたことを武勇伝として語ったということ自体が重要なのだ。そして河馬さんご指摘のように、「そんなことあるはずがない」とする根拠は勝手な決めつけに過ぎない。

次にこのエントリへのコメント。へぇそれっていつのどこのはなし? としか思えない部分なんかはスルーしておく。

ええ、ですから今の日本の国徳はじゅうぶん世界から高く評価されていますが何か?

人間といっしょで、国(それも一定以上に影響力を持つ国)については毀誉褒貶双方があるのがまあ普通ですよ。で、この方にとっては、死刑制度や代用監獄や女性の社会進出の遅れなどなど、各種人権状況に関して国連等から批判を受けているという事実は存在しない、と。そりゃ「毀」の方を組織的に無視していけば「日本の国徳はじゅうぶん世界から高く評価されています」と威張ってられるんでしょうがね。「誉められたうれしさはぐっと胸に畳んで、非難された部分については汚名をそそぐべく努力する」国と、「批判は無視して誉められたことは吹聴して回る」国と、どっちが「美しい国」ですかね。

*1:wogeさんご指摘のように、natamaru123氏は黒尼さんが目撃した時期にどれくらい「偽物」が蔓延していたのか証明する義務があるだろう、彼のこれまでの主張に照らすなら。

*2:黒尼さん自身「気分が悪くて、それが誰の命令で、どういうことをしたのかの詳細を聞かなかった」と付記しておられ、「告発」として機能する証言でないことははっきりしている。