最高裁、日中共同声明を根拠に中国人原告の請求権を否定

asahi.com 2007年04月27日20時36分

戦後補償裁判、4訴訟も請求権否定 最高裁で敗訴


 戦時中の日本の行為をめぐって中国人が損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一、第二、第三各小法廷は27日午後、計4件でいずれも原告側の上告を退け、敗訴させた。同日午前、第二小法廷が、強制連行をめぐる訴訟で「72年の日中共同声明によって賠償請求権は放棄された」との初判断を示したばかり。この解釈に基づき、戦後補償裁判が次々と姿を消す事態になった。

27日の夕刊紙面では石井明(元東大教授)のコメントとして、「当時の交渉経緯をみれば、中国は個人の賠償請求権をも付記したと解釈するのが自然」という見方を伝えているが、同時に「35年の時間はその認識に変化を生みつつある」という石井氏の指摘を付記している。
なお石井氏には『記録と考証 日中国交正常化・日中平和友好条約締結交渉』(岩波書店)という編著があるとのこと。


日中共同声明の法的な解釈についての判決の妥当性にコメントするにはそれなりの準備が必要なので、今回はパス。27日の朝日夕刊には「政府に救済押し付け」という小見出し最高裁批判の一節があるのだが、これについてはむしろ逆の見方も出来る。新たな立法措置による補償は可能なのに、それをしようとしないのは政府であり国会であり、要するに日本の有権者である。それを最高裁に「押し付け」てはいないか? と。


ただ、従来旧軍の戦争犯罪を否認する論拠として使われてきた、「金を取られる」論は皮肉にももはや通用しなくなった、ということができるのではないか。