いい大人の“情報戦ごっこ”
Sankei Web 2007/09/15 「論説 【土・日曜日に書く】論説委員・石川水穂 歴史問題でも情報戦に後れ」
10年前、安倍氏や中川昭一氏ら当時の若手国会議員が中心になってつくった自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は今年、南京事件をめぐる歴史問題で重要な成果を上げた。外務省に保管されていた南京陥落直後の昭和13年2月の国際連盟理事会の議事録とその討議の経緯を記録した機密文書を入手したことだ。
またこれですか。もう何年も前に翻訳されて『資料 ドイツ外交官の見た南京事件』(大月書店)に収録されていた「機密文書」ですね。その他の点についてはこちらを御覧下さい。
日本は南京の戦闘では圧勝したが、情報戦では中国に完敗していた。日本は今も、情報戦で中国に大きく後れをとっている。
日本が「情報戦」においてなぜダメダメかと言えば、結局のところ「自分の発言・行動が相手に、そして第三者にどのように受けとめられるか」を客観的に予測し、その予測に基づいて行動を調整する能力に乏しいからじゃないでしょうか。一般論としていえば、次のような主張に別に異議はないのですよ。
国際社会で何も反論しないことは、相手側の主張を認めたことになりかねない。南京事件など歴史問題で、いわれのない非難に対しては、実証的な調査研究で得られた史実を示し、積極的に反論すべきである。
問題は「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の「発見」などがこれっぽっちも「実証的な調査研究」じゃない、ということで。中国が当時「国際連盟の行動を要求したが、採択されなかった」、だから虐殺はなかった…なんてことを政治家が大まじめに主張したりしたら、世界の笑いものですよ。「あらゆる人権侵害が国連での非難決議の対象になる、と考えるほどおまえはナイーブなのか?」って。日本が拉致問題を国際的に認知させるのにどれだけ苦労しているか、忘れちゃったのかな?
「南京大虐殺」の発信源とされる英文の著書『戦争とは何か−中国における日本軍の暴行』を書いた英マンチェスター・ガーディアン紙の中国特派員、ティンパーリー記者が単なる第三者ではなく、中国国民党の宣伝工作の一翼を担っていたことも、北村稔・立命館大教授や東中野教授らの研究で分かってきた。
「ティンパリーに金を払って書かせた」説が破綻していることについては繰り返し述べてきたので、もう繰り返しません。が、これもまた極めて内向きの議論でしかない。だって、「宣伝」だったらどうだというんです? 日本が国際社会に対して拉致問題を「宣伝」しているのは、それがでっちあげだからですか? 北村稔自身、ティンパリーの記述にこれといった虚偽・誤りを見いだせなかったことは認めているんですがね。