「岸信介はアメリカのエージェントだった!」

週刊文春』10月4日号に掲載された『「安倍政権投げ出し」の原点 岸信介アメリカのエージェントだった!」。今年の6月に出版されたニューヨーク・タイムズの記者ティム・ウィナー氏の著書、Legacy of Ashes: The History of the CIA (Doubleday) とウィナー氏への取材に基づく記事。もっとも、実を言うとCIAが岸に資金を渡していたことをズバリ示す文書が公開されているわけではなく、「CIAから岸への資金提供を示す文書をこの目で見ています」と語るマイケル・シャラー教授(元国務省歴史外交文書諮問委員)が登場するだけ。というわけで、私がブクマで書いたように「なにをいまさら…。みんな知ってたでしょ?」の範囲をほとんど超えるはなしではない。例えば春日幹雄、『秘密のファイル CIAの対日工作』(新潮文庫)の下巻、第八章でもこの疑惑はとりあげられており、「当時、日本の総選挙にCIA資金が投入されたことは公然の秘密と化している」(272ページ)とされていた。本記事で強調されている岸とマッカーサー二世(駐日大使)との親密な関係も、すでに春日氏が指摘していた。


ちょっと興味深かったのは、ウィナー氏がCIAの自民党に対する支援が暴かれそうになった機会としてロッキード事件をあげているところ。もちろん児玉誉士夫がからんでいたからである。私はロッキード陰謀論に対して「すでに首相を退いていた田中を叩くための謀略だとすると、アメリカにとってリスクが大きすぎる」と批判してきたが、この私の主張を裏付けてくれる証言だと言えるだろう。
なお、ここでも言及しておいたように、前出の春日氏もまたロッキード事件陰謀論には否定的なみかたをしている。