メモ

山形浩生1997年に書いた文章に次のような一節がある。

蛇足ながら小林よしのりは、こういう低級な書物を引用すると『ゴーマニズム宣言』でせっかくきちんと展開している従軍慰安婦論争の足を引っ張るおそれがあるので、注意したほうがいい。保守反動右翼だってピンキリなのである。

「こういう低級な書物」の方はおいておくとして、97年と言えばすでに、現在みられる右派の慰安婦問題についての言説の原型はすでにできあがっていた時期である。アメリカ下院による「慰安婦決議」問題について、右派はあたかも「史実」が問題となっているかのように語るのだが、実際には(右派による資料の恣意的な利用などの問題はあるにしても)むしろ性暴力に対する意識の違いが明らかになったのだ…ということは何度か書いてきたが、別のいい方をすれば、小林の「従軍慰安婦論」を「きちんと展開」されていると読んでしまうメンタリティこそが問われているのだ、ということになるだろう。