今日買った本

今月の新刊。「沖縄タイムス」に昨年7月から12月まで連載された「命語(ぬちがた)い」(05年6月からはじまったキャンペーン「挑まれる沖縄戦」の一環)を再構成したもの、とのこと。慶良間諸島の生存者37人からの聞きとりをまとめたものだが、約半数が初めて自らの体験を語ったひとびとであるという。軍の責任を否定、矮小化しようとする政治的な策謀に対する怒りの広がりを示すとともに、沖縄に限らず戦争体験を語らないままで戦後の時間を生きた人々が相当数いた(いる)であろうことを推定させる事実である。


その意味で“貴重な証言”が集められているわけだが、それが教科書の記述に関わる資料(証拠)として扱われることになるだろう、ならざるを得ないだろう…という点には複雑な思いが残る。「オーラル・ヒストリー」が歴史学の方法論の一つとして認知されるようになることで文書記録以外の証言にも注目が集まり、またそれまで語ろうとしなかった人々の声を聞こうとする試みもなされるようになったわけだが、(以前にも書いたように)資料、証言として扱うことは一人の人間のトータルな体験を必然的になにものかについての「情報」として扱うことを不可避にしてしまうし、「資料批判」の名の下に敵意にさらされることも甘受せねばならなくなるからである。

  • 上田誠吉、『司法官の戦争責任 満州体験と戦後司法』、花伝社

著者は1926年生まれの弁護士(自由法曹団)。Amazon.co.jp を別件でブラウズしているときにたまたまみつけて即クリックしたのでまだ歴史家、法律家による評価なども全然調べてないのだが、「満州国」における治安体制、治安立法についての節があるだけでもまあ買ったかいはあるかな、と。