「毎日新聞の英語版サイトがひどすぎる」まとめ@wikiの翻訳は別にひどすぎたりしないが、残念ながら陸上自衛隊第三三普通科連隊の連隊長殿は、南京事件に関わった旧陸軍歩兵第三三連隊の「歴史と伝統」を「継承」したいとおっしゃっているので「後継者」と言われても弁解しにくいかな、という件(追記あり)

「毎日新聞の英語版サイトがひどすぎる」まとめ@wikiの翻訳がひどすぎる件

>that gave the world Pearl Harbor and the Rape of Nanking"
全文が"that gave the world"なんだからこの場合普通ガイジンにとって、


Pearl Harbor = ハリウッド映画のPearl Harbor


Rape of Nanking = アイリス・チャンの著書


のことを意味する。


ニュアンス的には皮肉っぽく:


この世にハリウッド大作映画、Pearl Harborとアイリス・チャンのベストセラーRape of Nankingを与えてくださったご先祖様を持つ日本の某省庁が、今度は日本の防衛政策の簡単な説明をしてくれるタカ派的なテディベアのぬいぐるみを持ったメイド服のかわいい少女漫画キャラクターを与えてくださった、とサイゾー(8月号)より。


皮肉ですのでこの場合のニュアンスは糞映画「Pearl Harbor」と糞本「Rape of Nanking」って感じかな。(w

原文の下線は省略。また「>」で導かれた引用部には「Nanking」という単語のあとに「"」があるけど、引用元の原文にはない。「全文」は「前文」の誤記かと思われるけどもちろん「文」ではない(動詞と間接目的語)。


で、まず動詞句が "give the world" だから映画と本のことだ、という理屈が意味不明。本や映画のタイトルは英語の印刷物ではイタリック体で表記するのが通常のルールだが、電子テキストの場合、ベタのテキストファイルではイタリックが使えないので代わりにクォーテーション・マークを使うこともある。で、こちらをみればわかるように、同記事には

The new book "Heiwa no Kuni no Nebaarando (The Neverland of the Peaceful Country)" has also proved to be as popular as its predecessor, with sales going well since its January release.

という箇所があって、すなわち本のタイトルは " " でくくって表記していることがわかる。だから、「外国人」(って、外国人なら英語が読めるとは限らんわけだが・・・)であろうがなかろうが普通に英語が読める人間が読めば、これは「パール・ハーバー南京大虐殺を引き起こした」としか読めない。
というわけで、「糞映画「Pearl Harbor」と糞本「Rape of Nanking」って感じ」の「ニュアンス」なんかはありようがないわけだが、さらに言えばマイケル・ベイの『パール・ハーバー』はともかく*1として、アイリス・チャンRape of Nanking が「糞本」だという認識は海外の市民にもたれてはいないのであって*2、これは自分の認識を勝手に「外国人」に投影した希望的観測にすぎない。ついでだけど

逆にまとめサイトの日本語訳を英語に訳すと・・・


The successor of the government that attacked Pearl Harbor and massacred Nanking


The successor of the government that was responsible for the attack of Pearl Harbor and the Rape of Nanking

後者はともかく前者はダメ。


さて、この件に関して池田信夫センセイがお怒りである。

サイゾー編集部は、この強調部分の記述が元の記事には存在しないと毎日新聞社に抗議した。これは日本軍の戦争犯罪を性犯罪と同一視して人種的偏見をあおる点で、Wikipediaと同質だ。こうした人種差別=性差別は、Connellのような祖国で通用しない三流ジャーナリスト(本人は「母国での就職難のため来日した」と告白している)や、欧米人の人種的偏見に迎合して「一級市民」として認めてもらおうとするマイク・ホンダノリミツ・オオニシのようなB級日系人が流しているものだ。

この記事を書く際にことさら真珠湾攻撃南京大虐殺に言及する必要はないわけであって、悪意のある表現だというのは間違いのないところだ。が、しかし・・・
s_kotakeさん経由で知ったニュースだが、

 同駐屯地司令兼第三三普通科連隊長の甲斐芳樹一等陸佐は、地元新聞に寄せた「創設百周年を迎えて」と題した一文で、陸軍歩兵三三連隊を「日露戦争支那事変に参戦し数々の戦果をあげ精強部隊として名をとどろかせた」と持ち上げ、「輝かしい歴史と伝統を後世に継承したい」と発言しています。
(2008年4月27日「しんぶん赤旗」)

とのこと。旧陸軍歩兵第33連隊といえば第16師団(長:中島今朝吾中将)歩兵第30旅団(長:佐々木到一少将)を構成する歩兵連隊の一つであって、いわば南京事件の主役となった部隊の一つである。偕行社の『南京戦史資料集』にも「俘虜は処断す」と記載した戦闘詳報が収録されている。一般論として、高い報酬で報いることができるわけではない組織が「歴史」とか「伝統」でもって成員のロイヤリティーを確保しようとするのはありふれたはなしだし、いくら私でも晴れの舞台で南京大虐殺に言及せよとは要求しない。また、これは連隊長の発言であって防衛大臣とか幕僚長の発言というわけでもない。しかしながら、正面切って問題視されればこれは「自衛隊が旧日本軍の後継者であると高級指揮官が言明した」と受けとめられて仕方がない発言である。「人種的偏見」をあおられたくないのなら、自衛隊は旧日本軍の戦争犯罪*3を免罪するかのような動きとははっきり距離を置くべきであろうし、旧軍との連続性ではなく断絶をこそ強調すべきであろう。


追記:私なら「日本アンチキムチ団」なんてタイトルのブログの記事は−−特にそれが旧日本軍医関係するものなら−−まず眉に唾つけて読みますがねぇ。あと、池田センセイのところにはもちろんトラックバック送りましたが、現時点では承認されてませんね。

*1:『チーム☆アメリカ』でも "Pearl Habor sucks" とか「なぜマイケル・ベイは映画を作り続けられるんだ?」てな歌を流されていたし

*2:専門家なら「問題の多い本」とは評するだろうが、「糞本」とは呼ぶまい。

*3:そのなかには明らかに性犯罪も含まれているのだから、「戦争犯罪を性犯罪と同一視」などというクレームは無意味。