新聞記事文庫

june_tさんのエントリ「神戸大学・新聞記事文庫」経由で、神戸大学付属図書館デジタルアーカイブのサービス、「新聞記事文庫」を知る。

 神戸大学経済経営研究所で、明治末から昭和45年まで、新聞の切抜きをストックしていたものがもとになっている。冊子形態のほかマイクロフィルムで保管してきたものを電子化し、検索可能にして、電子ネットワークで公開している。

という由来なので、もちろんコンテンツは経済関係のものに限られてはいるのだが、試しに1937年のものを斜め読みしてみると当然のことながら戦争の影響を見てとることができる。例えば東京朝日新聞は12月3日から28にかけて全15回で「戦時経済行進譜 統制強化の一年」と題した連載を掲載している。また読売新聞の12月22日〜24日、「支那法幣は何処へ行く (上・中・下)」は次のような書き出しで始まる(旧仮名遣いを新仮名遣いに改めた)。

一九三五年十一月イギリスの援助によって幣制改革が行われ、次いで一九三六年五月米支銀協定の成立に伴う第二次幣制改革によって補強された支那の新幣制も今次の支那事変勃発と共に一時は脆くも崩壊するかの如き印象を一般に与えたが、その後における戦局の進展わけても上海及び南京陥落による支那側の徹底的敗北にもかかわらず事実は意外にも支那の幣制はこれによって却って逆に強化されたかの如き現象を示している

これに続く分析は少なくとも部分的にはその後の展開を正しく予見しているところもあり、国中が底抜けの楽観論に染まり切っていたわけでもないことがよくわかる。これは12月14日からの京城日報「南京陥落の後に来るもの(一)〜(三)」でも同様であって、「現実に於ては南京が陥落するとも統制強化の傾向は少しも緩和されず益々強化されて行くことは必至である、南京は遂に陥落したが、単に今後から明年二、三月頃までの動きを見るとしても次のような統制強化の諸要因が数えられ、財界への圧力を加えることを考慮する必要がある 」という観測が示されている。