「”国民”への道のり〜明治日本・農村の記録〜」ほか
ドラマ『坂の上の雲』やシリーズ「JAPANデビュー」を含むNHKの企画「プロジェクトJAPAN」の一本として年末30日に放映された「”国民”への道のり〜明治日本・農村の記録〜」を観る。
スペシャルドラマ「坂の上の雲」、第一部は、明治の初めから日清戦争の頃までを描いた。ドラマ第一部の放送後に、同じ時代をドキュメンタリーで描く。農村を舞台に、そこに生きる人びとが、いかにして近代化の波や戦争と向き合い、「自分が日本国民である」という意識を高めていったのか、その道のりをたどっていく。
学校、メディア(幻灯機、新聞)、徴兵制が「国民意識」の形成に果たした役割を、地理的には長野県・中川村を中心に、主題としては兵役に対する意識の変化を中心に描いたもの。日清戦争における勝利が「国民意識」の形成に決定的な役割を果たした、とする。また「定遠」の乗組員が起こした長崎事件について、やはり「外圧」が国民意識の形成に寄与するとされている(川島真・東大準教授のコメントとして)が、その際新聞が強硬路線を主張したことに触れられてはいるものの、マスメディアの果たした役割についてはあまり踏み込まれていない。1時間の尺なのでなにからなにまで詳しく扱うわけにはいかないのはわかるが、なにしろ国営放送による「プロジェクトJAPAN」という企画の一環である。21世紀の日本における「国民意識」のあり方について問題提起をしようという意識は当然あるだろう。今後、この企画が日本の近代化においてマスメディアが果たした役割をどうとりあげてゆくのか、注目したいところ。
なお、過去にこのブログでとりあげた文献との関連では、『旅順と南京 日中五十年戦争の起源』(一ノ瀬俊也、文春新書)で紹介されていた丸木力蔵日記(日清戦争に従軍した軍夫の日記)が紹介され、一ノ瀬氏もコメンテーターとして登場。
元旦からは同じく「プロジェクトJAPAN」シリーズからシリーズ「日本と朝鮮半島2000年」が一括再放送。見逃していた最初の2回を録画することが出来た。このシリーズ、スタジオに日韓双方の研究者を呼ぶなど、複眼的な視点を提供しようとする意図がみえて興味深い。まあ、あまり詳しくない題材なのでどこまでそれに成功しているのかは評価できないが。