「検証 昭和報道」、「靖国参拝」の章

朝日新聞の夕刊で連載されている「検証 昭和報道」の「靖国参拝」の章(全6回)が終わりました。1985年の8月15日に行なわれた中曽根首相(当時)の靖国参拝時の報道について、次のように振り返っています。

 当時の靖国関係の記事は、大半が政教分離をめぐるもので、のちに最大の焦点となるA級戦犯合祀問題はほとんど触れられていない。憲法20条の壁を乗り越える目の前の動きを追うあまり、憲法以外の視点に目が届かなかった。
(第4回、原文のルビを省略)

 記者たちは、中曽根とともに参拝に訪れた閣僚の一人ひとりに同じ質問をぶつけた。
 「参拝は、公人としてか、私人としてか」
 報道陣の主な関心は政教分離にあり、「アジア諸国の視点」という意識はあまりなかった。
(第5回)

また「中国の国内情勢が絡んでいた」とはしたうえで、外務省については次のような証言が紹介されています。

 日本は中国の動きを過小評価していた。公式参拝の1年後、外務省担当だった星浩(54)にアジア担当の高官はこう漏らした。「公式参拝の前、総理から中国の反応の分析を支持されたが、参拝へのお気持ちも斟酌し、楽観的な報告を上げてしまっていた。
(第6回、原文のルビを省略)

アジア・太平洋戦争をめぐる議論がいかに内向きの発想に支配されていたかを示す一つの事例ということでしょう。