『ジョン・ラーベ』

先日注文した映画 John Rabe のDVDが思いのほか早く届きました。ドイツ語の台詞を英語字幕で読まねばならないこと、また英語で話される台詞には英語字幕がつかない(聴覚障害者のためのクローズド・キャプションはドイツ語だけで、英語字幕は英語話者向けということらしい)ため、最低2回は観ないと細かなところまでは把握できそうにありません。
ただし、ディテールに至るまで史実に忠実な脚本ではなく、脚色は厭わないという方針であることはすぐにわかります。例えば、実際には南京にいなかったラーベの妻がラーベとともに暮らしていますし、12月に入るまでは南京は平穏で多数の外国人がいたことにされています。また、国際安全区の準備も12月に入ってからのこととされています。ラーベとウィルソン医師の確執を強調したり、当初ラーベが安全区の設立に消極的であったように描かれている(安全区の設立を提案するのはローゼンということにもされています)のも、より劇的に見せるためであると思われます。日本軍についての描写にも「誘導爆弾」と聞こえる台詞や「柳川中将率いる第6師団」という台詞があったりと、細かな考証に拘らない姿勢がうかがえます。有名な“上海の停車場で救助される赤ん坊”のフィルムも使われていて、もし日本公開されていれば否定派がケチをつけそうな描写があれこれあります。「日記の朗読」として演出されている部分についても、実際の日記とは一致していません。もちろん、これは劇映画であってノン・フィクションではありませんからある程度の脚色は許容されるわけですが、史実と一致しないディテールの描写が少なからずあることは念頭においておいて損はないでしょう。