「五月広場の祖母たち」、続報

厳密には「戦争犯罪」ではなく「国家犯罪」というタグをつけるべきでしょうが、あまりタグを増やしても意味がないので。
軍政時代のアルゼンチンで、「左翼狩り」によって殺害された女性の子どもを取り戻すべく、「五月広場の祖母たち」という組織が活動を続けていることを、昨年朝日新聞が報じていました
同会の活動や真実を知った子どもと養父母との関係などについて、毎日新聞が報じています。昨年8月の朝日の報道ではそれまでに101人が奪還されたとのことでしたが、今回の記事では今年の10月までに「105人が本来のアイデンティティーを取り戻した」とされていますので、この1年間で大幅に身元確認が進んだ、ということではなさそうですが。

  • 毎日jp 2011年11月28日 「アルゼンチン:軍政下の左翼狩り 「奪われた赤ん坊」出自判明で苦悩」(魚拓

 軍事政権はイデオロギーの違う左派の親を殺して乳児を奪い、右派の家庭で育てる「思想矯正」を試みた。拉致した女性が妊婦の場合、出産までは殺害しなかった。5000人を収容した海軍工兵学校には妊婦部屋が二つあり、妊娠7カ月を過ぎると集められ、出産した。全国で約500人の赤ん坊が、子供を望む軍人や警察官に引き取られた。

単に敵を抹殺するだけでなく、人間の尊厳そのものを破壊し尽くそうとするイデオロギーの残虐さがよくわかります。
ところで、スターリン文革クメール・ルージュを引き合いに出して「これらは今も左翼にとっての思想的課題である」とお説教を足れる方々を時折見かけます。まことにごもっともなはなしなのでそれ自体については反論したことなどないんですが、そうおっしゃる方々がこうした反共政権の暴力(およびそうした政権を支えたアメリカの政策)を自分自身の思想的課題と捉えているふしが見えない……いやまあ、内心のことは目に見えませんから問わないとして、こうした暴力について積極的に問題提起をしているのを見た記憶がないのは、極めて不可解なことです。