クリスチャン・ベイルへの暴行事件の報道からわかること

南京事件を題材にしたチャン・イーモウの映画 The Flowers of War に主演したクリスチャン・ベイルが映画のプロモーションのため訪問した中国で人権活動家と面会しようとした際、治安要員に殴られるという事件が起きています。

クリスチャン・ベイル 南京大虐殺」あたりでググってみれば、日本語の記事ではこの映画が「反日」かどうかが焦点化されている(あるいは、南京事件を題材にしているというだけで反日認定している)ことがわかりますが、これらの記事からは欧米での認識と日本のそれとの大きな隔たりがわかります。
少し前に、女優のヒラリー・スワンクチェチェン共和国のカディロフ大統領の誕生日パーティーに出席して批判を浴びたことがありましたが、欧米メディアは政治家だけでなく、映画スターのような著名人にも真っ当な人権感覚に基づくふるまいを要求します。そしてクリスチャン・ベイルにとってはこの映画に出演することと、中国政府に弾圧されている人権活動家に面会しようとすることとは首尾一貫した態度であり、またメディアもそのように了解しているわけです。こうした「人権感覚」基準による批判の矛先はもちろん日本にだけ向かうわけではなく、批評家はこの映画が日本人を「悪魔化」していないかどうかを問題にしますし、主演俳優であるC・ベイルはそれに対してきちんと反論することを要求されます。また、今回の事件によってこの映画のオスカー受賞が難しくなったと観測されているのも、同じ「人権感覚」基準によるものであるわけです。
中国政府による人権侵害を批判しながら南京事件否定論を主張するというふるまいが、欧米メディアから肯定的に評価されることは100%あり得ません。