相変わらずネットではちょくちょく「人口20万のところで30万人殺せるはずがない」論法を読まされるわけですが、国際安全区に集まった難民の数についての委員会の推定を信頼する限り（もちろん否定派はそういう前提に立っているはずです）、「人口20万」説が成立する余地はありません。ゼロです。なにしろこの説は (1) 10万人ないしそれ以上の規模の中国軍将兵を無視しており、かつ (2) 安全区の外に残留していた南京市民（その総数を明確に示す包括的な資料はないが、個別の証言、証拠はいくつもある）を無視しているからです。そしてこの2点を無視することが不当であることは自明である以上、不当な主張を平気で主張できるものだけが「人口20万」説を口にできるわけです。
他方、「30万人殺害は不可能」という主張の最大の論拠が「人口20万」説だったわけですから（ほかにも「原爆でも使わないと不可能」論とかがありますが、どれをとっても与太話に過ぎません）、「人口20万」説の破綻とともに「30万人殺害は不可能」も破綻します。「不可能」が否定されれば当然「可能」ということになるわけです。
まともな史料とまともな論理に基づいて「犠牲者30万人」説の蓋然性の低さを攻撃すれば反論するのはほぼ不可能なのに、わざわざ成立不能な「人口20万」説に依拠しようとするのはまったく理解に苦しみますね。
