パル氏のご子息はお怒りのようで

『世界』(岩波書店)の13年9月号に、内閣外政審議室長として「村山談話」の作成に関わりその後インド大使などを務めた外交官、谷野作太郎氏のインタビューが掲載されています。原案で「終戦」と「敗戦」という語が混在していたのを「敗戦」に統一するよう提案したのが故・橋本龍太郎(当時は通産大臣)だった、などという興味深い裏話も出てきますが、こんなエピソードも出てきます。

 (……)また「史実」についても、自分の主張に合うところだけを都合よく選びとってつなぎ合わせた「良いところどり」もいけない。極東軍事裁判A級戦犯の人たちを全員無罪としたパル判事を一方的にあがめ奉る向きについて、そのことを感じます。私がインドにいた時、インド外務省にいらしたパル判事のご令息が、このことについて当惑して怒っておられました。
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まあ正確なところパル判事の遺族がどう考えどう感じているかについて、これだけで即断するわけにもいかないでしょうが、しかし自分の父親の行いが植民地支配や侵略戦争の正当化、戦争犯罪の免罪に利用されているのを知れば、旧植民地国の市民が当惑し怒るというのは非常にありそうなことではありますね。