戦争関連番組雑感

今年は“太平洋戦争80年”ということで例年よりも冬の戦争関連番組が多かったように感じます。今年が同時に満洲事変90年の年でもあることはほとんど無視されていること、12月8日にはスポットがあたっても12月13日はスルーされていること、そして日本軍による加害を正面から取り上げる番組は稀であること……という限界は例年通りです。というわけで全体としてはとても高くは評価できない今年の「12月ジャーナリズム」でしたが、いくつか印象に残った番組もありました。

まずは自らの罪への自覚から赦免申請書を出そうとしなかったBC級戦犯を扱ったこの番組。例えば捕虜と民間人を殺害したとして終身刑判決を受けた憲兵准尉は、戦犯釈放のための手続きを推し進めていた国の担当者に「事件の非人道的なことに対する深い反省に基づき 赦免を申請する意思はない」と語ったという。また捕虜殺害でやはり終身刑となった海軍の兵曹長は「いかに上官の命令によるものであったとはいえ 何の恨みもない人の生命を自らの手で奪ったことに対し 深く悔悟しており自ら進んで申請することを躊躇」していると述べたという。これが例外的なケースだったことは言うまでもないことだが、「命令」を逃げ道とせずに自らの行為に向き合おうとした戦犯がいたことはもっと知られてよいのではないか。

www.nhk.or.jp

番組の後半で登場する吉田裕さんのインタビューがこちらに掲載されている。また15日までは「NHKプラス」で見逃し配信されている。

 

もう一つ印象に残ったのはこちら。

www.nhk.jp

地元住民と亡くなった米兵の遺族の双方を若いアメリカ人ジャーナリストが取材。撃墜を生き延びた飛行士が民間人によって殺されてしまう事例などもあったが、ここでは沖縄戦で息子を失ったばかりの市民が息子と同年輩の飛行士を捕らえ、自宅でイチゴをふるまった……といったエピソードが紹介される。もっとも憲兵隊に引き渡された生存者は一人も終戦の日を迎えられなかったのだが……。こちらは17日まで見逃し配信中。