(実際にアップロードしたのは27日です)
今年の3月にマハムディヤで発生した一家殺害・強姦事件では6月に主犯格の元米兵が起訴され、その後さらに5人の現役兵士が訴追されたが、8月22日のTBSラジオ、「コラムの花道」で町山智浩氏がこの事件をとりあげた*1。町山氏のはなしとネット上の情報を総合すると、
- 主犯格の元兵士は事件発覚前に除隊していたが、理由は(反社会性)人格障害だった
- 同元兵士は取材に答えて、イラク人を「女子供まで」敵視するような発言をしていた
- 人格障害を理由に2005年に除隊になった兵士が(イラク駐留米軍約20万人中)1000人を超える
「人格障害」はDSMにも載っているカテゴリーであるから、臨床的には「使える」ものなのかもしれないが、戦争犯罪の「説明」に安易に使用することには問題があろう。そもそも「説明」になっているのか? という疑問もさることながら、事件を個人の資質のみに還元し、イラク戦争そのものや米軍が抱える問題点を覆い隠すことになりかねないからだ*2。米陸軍の機関紙Stars & Stripesでは起訴された元兵士が "unspecified personality disorder" であるとしていたが、unspecifiedなのに「人格障害」であることは明言しているあたり、勘ぐろうと思えばいくらでも勘ぐれてしまう*3。戦争目的の曖昧さ、兵士不足による負担の増大(「戦友」の被害の増加)、誰が「敵」であるかがわかりにくいゲリラ相手の戦い(弁護側は、被告の「ストレス」を強調しているようだ)、これらに起因する軍紀の弛緩(被告たちは酒に頼り、事件当時も酔っていたとされる)、「敵」への人種偏見…など、戦争犯罪の頻発する戦場を特徴づける多くの要因がイラクの米軍にもみられるのではないか。
もっとも、実行犯の責任追及と、こうした構造的要因の追求とをどう両立させるか、言い換えれば個人の責任をキチンと追及しつつ、実行犯だけをスケープゴートにして終りにしないためにはどのような語り方が有効なのか、も課題となろう。