「特攻」というメタファー

本館で書くか別館で書くか、書くとしてどのカテゴリで書くか迷ったのだが、とりあえずここに。


今朝通勤のため電車に乗っていると、向かいに座った男性の読んでいるスポーツ紙に「特攻ローテ 捨て身の中4日登板」といった(趣旨の)見出しが躍っている。今日5日からのジャイアンツ戦から、タイガースが先発ローテーションを組み替えるという記事である。
中4日なんてメジャーでは当たり前、日本でも高校生が2日続けて計24イニングを投げたりしているのに中4日登板が「特攻」とか「捨て身」だというのにまず笑ってしまうのだが、次いで「特攻」というメタファーの軽さに苦いものを感じたのである。
いしいひさいちがむかし高校野球とからめて「原爆」というメタファーの氾濫を皮肉る4コマを書いていたが、野球では「核弾頭」という常套句もよく用いられる。昔は「水爆打線」なんてのもあった(って、本で読んで知ってるだけですが)。


口にすべきでないことば、ジョークにすべきでない対象は存在するか? ムハンマド諷刺画事件は改めてこの問題を提起したわけだが、ムハンマドはおくとして「原爆」「特攻」がネタの題材としてタブーであってはならない、という主張に十分理はあると思う。それにしても上に挙げたような例はあまりに軽すぎる。他者への侵害性をはらむことば(いわゆる差別用語などもそう)を敢えてネタに使う際に、自己批判の契機がまったくみられない。自分のヴァルネラブルな部分は決して晒すことなく、他者に痛みをもたらす表現については「タブーにするな」と主張する。そうした用例まで擁護することは必要なのだろうか。